メジャーリーグの取材で、9月下旬から米ロサンゼルスに来ている。ポストシーズンに向け、日本から大谷翔平投手、山本由伸投手らのドジャース戦を見に行く人も多いはず。今回は恥を忍んで紹介する、私自身のロス滞在での失敗談の続き。他山の石となれば。
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仕事としては初めて訪れたドジャースタジアムでのドジャース-ロッキーズ戦後、悲劇が起きた。記事を書き終え、午後11時30分ごろ球場を出た。もう、観客はいない。配車アプリ「ウーバー」で帰路に就こうとしたのだが、日本で借りたポケットWi-Fiでネットがうまくつながらない。途中までいくのだが、最後のマッチングまで届かない。まずい…。50回はトライしたが、つながらない。冷や汗が出てくる。もう1つの配車アプリ「リフト」も同様。球場内の記者席に戻ろうとしたが、1度出た扉は外から開かない。「このまま、ここで野宿するしかないのか」。暗い駐車場で立ち尽くした。
40分ほど経過したころ、カートに乗ったセキュリティー・ガードの人物が、門扉の戸締まりを確認しに来た。暗がりから出て行ったので「ウッジュー・ヘルプ・ミー? アイム・ジャパニーズ・ベースボール・ライター(助けて下さい。日本の野球記者です)」と怪しまれないように、できるだけ丁寧に懇願した。ウーバーで帰ろうにもつながらないので、タクシーを呼んでほしいと伝えた。彼はどこかと無線で連絡を取ると「OK。駐車場のゲートまで行こう。横に乗りな」。地獄に仏とはこのこと。徒歩なら8分ぐらいはかかる、駐車場の入り口であるゲートAまで乗せてくれた。
ゲートでは別の職員に引き継がれた。親切にも、タクシー会社の電話番号を調べ、電話してくれた。大手のタクシー会社は、自動音声での配車依頼受け付け。当然、職員のネーティブ発音なのだが、なぜか途中まで進んでも、最後の配車にまで至らない。何度か試した後、他の「独立系だ」というタクシー会社に連絡してくれ、ようやく配車が決まった。レイモンド(Raymond)さん。ありがとう。名刺を渡すと「来年カブスとの開幕戦で東京に行ったら連絡するよ」。おいしい食事に招待しますと伝える。
15分後の深夜、タクシーがやってきた。往路で使ったウーバーと3ドル(約435円)しか運賃は変わらない35ドル(約5080円)+チップ。深夜0時54分、どうにか球場から北東にあるイーグルロックのモーテルに帰宿できた。一時は野宿を覚悟しただけに、人の親切が身に染みた。
いくつか教訓が学べた。まず「海外ポケットWi-Fiには通信量の上限があること」。1日1ギガまでのプランで契約しており、これを超えると、極端に通信量が制限される。一日中、付けっぱなしにしていたので、位置情報を送っていたため上限を迎えていたのだ。しかも、通信量のリセットは、現地時間ではなく日本時間。制限量を超えても、ほそぼそ通信はできるのだが、ウーバーやリフトで配車にこぎつけることはできない。配車決定の手前までは通信できるので、ややこしい。当初、通信量制限が原因だと気がついていなかった。
2つ目の教訓。ドジャースタジアムには無料のWi-Fi(DodgersWiFi)が飛んでいる。この時は存在を知らなかったのだが、慌てずに、こちらにアクセスすれば良かったのだ。パスワードがないため不安になったかもしれないが、球団提供だと知っていれば落ち着いて、つなげたはずだ。
3つ目の教訓は、いざという時のために、タクシー会社の連絡先を書き留めておくこと。ウーバーにせよ、リフトにせよ、100%のWi-Fiやスマホ頼みは危険だ。
4つ目の教訓は、ドジャースタジアムは駐車場入り口にゲートが設置されており、エリア内で取り残されても、強盗などに襲われる心配はないということ。無理に駐車場から外に出て、真夜中に歩いてどこかまで行こうとする方が危険だろう。ゲートは、夜中までセキュリティー・ガードが駐在している。
ドジャースタジアムに配車アプリで到着、乗車する際は「LOT11」と場所が決まっている。日本で「球場から遠い」と聞いていたが、一塁側や右翼側からでなければ、三塁側からは徒歩10分以内には着く。試合終了時は大渋滞が起きるので、簡単には球場から出ることができない。逆に、終了から時間がたつとゲートが閉まるので「LOT11」には入れない。そのため、2日目以降はゲートAまで歩き(10分ほど歩くが下り坂なので苦にならない)、リフトで車を呼んだ。ウーバーよりリフトの方が、少しだけ安いケースが多い。ただし、日本語には対応していない。【斎藤直樹】