船着き場で降りたお相撲さんが、目の前にある福岡国際センターにさっそうと歩いていく-。佐渡ケ嶽部屋の力士たちは九州場所中、フェリーで会場に通っている。宿舎の最寄り駅であるJR西戸崎(さいとざき)から博多湾を沿うように電車移動した場合、乗り継ぎを含めると1時間以上かかる。しかし西戸崎港から航路で博多ふ頭へとショートカットすれば、所要時間は15分程度。片道450円と運賃も安い。

佐渡ケ嶽部屋が九州場所の宿舎を西戸崎に構えるようになって9年がたつ。強風や波の状況次第で運休することもあるフェリーだが、佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)によれば、場所中に欠航になったことは2度しかない。船は貴重な足となっている。

大関琴桜の付け人である幕下の琴大進(23)は6年目。「自分にとって九州場所は、船で通うのが当たり前」と笑う。朝稽古を終えたあと、船上で過ごす時間は精神を整えるうえでも貴重な時間だ。「海から景色を眺めながら、取組への気持ちを高めています」。波に揺られ、絶景で心を洗い、集中力を研ぎ澄ませて土俵に向かう。【奥岡幹浩】

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