30日間で3700キロをE-Bike(YAMAHA WABASH-RT)で走り切り、佐多岬~宗谷岬の日本縦断を果たした、旅行家藤原かんいち。前例のないE-Bikeによるチャレンジ。運動不足の61歳の中年男にできるのか!? 一体どんな旅だったのか!? 激動の30日間を旅日記で振り返ります。
■Day30 2022/06/14
佐多岬から宗谷岬まで、18の名道・絶景道(ステージ)をつないで30日間で日本縦断することを目標にスタートしたE-BIKEの旅。ついに最終日の朝が来た。残っているのはステージ17『サロベツ原野・道道106号』と18『宗谷丘陵白い道』の2つ。距離は約230km。いつもの約2倍の距離だが果たして、1日で走り切れるのか!? 運命の1日が始まった。
朝4時、準備が整うと名寄のホテルを出た。日の長い北海道、すでに夜は明けているが、深い霧が出ているので薄暗く感じる。名寄市内、国道沿いにある『すき家』に入り朝食。納豆定食をガッツリ食べて、エネルギー補給。これで50kmくらいは走れるだろう笑。もちろんE-BIKEのバッテリーもフル充電、準備万端だ。
霧の名寄を出発する。国道40号を北へ向かう。朝4時台、さすがにすれ違う車もいない。まるで町全体が眠っているよう。町を出ると、どこまでも霧の道が続く。その景色は幻想的で、森から鹿が飛び出してきても不思議な感じがしない。
約1時間で20kmを走り美深町に着いた。順調に進んでいる。コンビニに入りホットコーヒーを買って飲む。少しでも進んでおきたいので、飲み終えるとすぐに走り出す。
7時半、約53kmを走り音威子府町にある『道の駅おといねっぷ』に到着した。「おはよう!」「おはようございます!」オートバイで同行して動画を撮影してくれている平塚くんと合流。これまで苦楽を共にしてきた、唯一の相棒だ。よくここまで一緒に来てくれた。「いよいよ30日目だね、距離はあるけど、今日中に何とか、ゴールしたいねー」「かんいちさんなら大丈夫ですよ、絶対に行けますよ!」うれしい言葉に背中を押され、再び走り始める。
スタートから1か月以上平塚くんと一緒に旅をしている。最初は一緒に走る予定だったが、実際に走り始めると乗り物が違うため、ペースを合わせるのが難しいことがわかった。それから移動は別々にして、基本的なやり取りはLINEで。事前に撮影する場所(観光スポットや絶景ロードなど)をいくつか決めておき、ポイントで合流して動画撮影をするようになった。このスタイルを毎日繰り返して、ここまで進んできた。僕はかなりマイペースなので、よく1カ月も付き合ってきてくれたと思う。心から感謝する。
次は30km先の『道の駅なかがわ』で合流の約束をして走り出す。音威子府を出ると青空が見えてきた、ようやく霧のエリアを脱出したらしい。道はほぼ平坦、いいペースで進んでいる。途中に立ち寄りたい観光スポットもないので、ひたすら無心でペダルをこぎ続ける。北海道の田舎は信号がないのでずっと走り続けられる。時速18kmで走っていると、当たり前なのだが、1時間後には確実に18km進んでいるのが面白い。
名寄を出て8時間。約120km走り、中間地点となる天塩町に着いた。天塩は北海道内第2位の長さを誇る天塩川の河口に位置する町で、ステージ17『サロベツ原野・道道106号』の入口の町でもある。昼の12時半の時点で、すでに通常の1日分の距離を走っているが、気持ちが高揚しているのかあまり疲れは感じない。ここまでは強い向かい風などもなく順調、この調子で進んで行ったら今日中に宗谷岬に着くことができる。希望の光が差してくる。
天塩のコンビニで昼飯のカツ丼を食べ終えると、すぐにステージ17『サロベツ原野・道道106号』へ突入した。このルートは別名『オロロンライン』と呼ばれ、オートバイライダーの間では一二を争う人気のルートとなっている。右は広大なサロベツ原野、左には青い日本海、その間を一直線に延びる道。北海道の大きさを全身で感じながら進んでゆく。
少しすると風力発電用の巨大風車が見えてきた。『オトンルイ風力発電所』だ、道に沿って28基もの風車が立ち並ぶ姿は圧巻。この道を初めて走ったのは37年前のこと。当時は50km越える荒野のダートロードで、オフロードバイクで激走したことを憶えている。思い出の道はいまE-BIKEで走っていると思うと感慨深い。
ひたすらまっすぐな道が続く。天塩からオロロンラインを走り続けること3時間半、ようやく稚内市内へ向かう坂道が見えてきた。久しぶりの坂道がうれしい。坂の途中にある夕日ヶ丘パーキングに立ち寄り、振り返るとここまでずっと姿を隠していた利尻富士が、低い雲の上から顔を出していた。最後の最後にこんな絶景が見られるとは、運がいい。
午後5時半。走行距離190km。稚内に到着した。朝4時から12時間ほとんど走り続けている。ここまでくると疲れているのかどうか、わからなくなってくる。残り30km。気持ちはイケイケ。脚がどうなってもいい、最後まで突っ走るだけだ。
稚内市街を抜けると『宗谷岬24km』の標識が現れた。海沿いの国道を進んでゆくと、東北地方の『やませ』を思わせる深い霧が海から現れ、道を覆いつくした。快晴の宗谷岬にゴールできると思ったのに予想外の展開だ。しばらく霧の中を進んでゆくと、「これはこれでドラマチックでいいかも♪」と思い始めている、ポジティブな自分に笑った。
ラストステージの宗谷丘陵『白い道』入口の標識が現れると、国道を離れ、標識に沿って進んでゆく。道は急傾斜の上り坂となり、路面は舗装からホタテの貝殻が敷きつめられた『白い道』に変わった。時計はすでに午後7時を回っていて、太陽は西の海に沈もうとしていた。オレンジの夕日を背中に浴びながら白い道を進んでゆく。これで無事全18ステージをコンプリート達成! あとは宗谷岬にゴールするだけだ。
白い道を抜けて丘の上を走っていると、再び霧が立ち込めてきた。しばらく進むと霧の中から大きな鹿が2頭現れ、目の前を横切った。その光景の美しく、絵本の1ページを見ているよう。さらに進むと小高い丘の上に、数十頭の鹿の群れがいた。霧の丘にたたずむ鹿たち、その姿はとても幻想的で、まるで夢の中にいるようだった。「まさか、この旅は幻じゃないよね…」苦笑いをする。
長い坂を下り宗谷岬に出ると、駐車場にカメラマンの平塚くんの姿があった。近くに垂れ幕を持った人がいるけど…何だろう? よく見ると旭川の小原くんだった。垂れ幕には『E-BIKE JOURNEY 日本縦断3500kmゴール!!』と書かれている。昨日、旭川で会ったときは、宗谷岬に来るなんて一言も言ってなかったぞ。驚かせやがって。でも、なんて、いいヤツなんだ。本当に感謝、感激だ。
ライトアップされた宗谷岬のモニュメントをバックに、平塚くんと小原くん3人で記念撮影。正真正銘、僕は30日間で日本縦断を成し遂げたのだ。61歳でも、できることはまだ無限にある。言葉にならない喜びと感動で、胸がいっぱいになった。さあ、次は何にチャレンジしよう? 僕の気持ちはすでに、未来へ向いていた。
改めまして『ペダル旅』を応援していただき、ありがとうございました。心より感謝いたします。今回で連載は最後となりますが、僕のチャレンジはこれからも続きます。皆さんも何かやりたいことを見つけたら、ぜひとも、チャレンジしてください。その先にはきっと、必ず、想像を超える新しい景色が待っています。チャレンジと共に、悔いなき人生を!
旅行家 藤原かんいち
■日付:2022年06月14日
■今日の走行距離:228.0km
■6月14日のルート
■全走行距離:3689km
藤原かんいちが選ぶ「死ぬまでに走って欲しい道18選」
01『佐多岬ロードパーク』鹿児島県
02『桜島溶岩ロード』鹿児島県
03『阿蘇パノラマライン』熊本県
04『やまなみハイウエイ』熊本県&大分県
05『瀬戸内しまなみ海道』広島県&愛媛県
06『四国カルスト公園線』愛媛県&高知県
07『剣山スーパー林道』徳島県
08『暗峠・国道308号』大阪府&奈良県
09『奥琵琶湖パークウェイ』滋賀県
10『千里浜なぎさドライブウェイ』・石川県
11『志賀草津道路・渋峠』長野県&群馬県
12『金精峠&いろは坂』群馬県&栃木県
13『三陸海岸・国道45号』宮城県
14『八幡平アスピーテライン』秋田県&岩手県
15『十和田湖&奥入瀬渓谷の道』青森県
16『美瑛ジェットコースターの路』北海道
17『サロベツ原野・道道106号』北海道
18『宗谷丘陵白い道』北海道