【センバツ】21世紀枠候補の横浜清陵は「Y校」前の崖の上 家庭科教諭の監督が珍しい取り組みも

  • 来春センバツの21世紀枠関東地区候補に選ばれた横浜清陵
  • 21世紀枠候補校の吉報もいざ知らず緊急ミーティングを行う横浜清陵の1年生野球部員(撮影・金子真仁)
  • 北海道の修学旅行中に21世紀枠候補校の選出を受けた横浜清陵の2年生部員たち(同校提供)
  • 北海道への修学旅行中に21世紀枠候補校に選出された横浜清陵の2年生部員(同校提供)
  • 【イラスト】センバツ21世紀枠地区推薦校

来春の第97回選抜高校野球大会(25年3月18日開幕、甲子園)の21世紀枠の地区候補9校が発表された。関東地区からは横浜清陵(神奈川)が県内校では初めて最終候補9校に選出された。25年1月24日の選考委員会で9校が比較検討され、センバツ出場の2校が決定する。

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横浜、東海大相模、慶応、桐光学園…神奈川県は全国屈指の高校野球の激戦区だ。公立校にとって甲子園への道は険しい。

スカイブルーのユニホームと“Y校”の愛称で全国の高校野球ファンに知られる横浜商が、90年夏に甲子園に出場した。それを最後に34年間、神奈川の公立校は甲子園に届いていない。

そのY校の正門から視線を上げると、京急線と首都高の高架をはさみ、横浜清陵のキャンパスが崖上に見える。徒歩6分半、そのうちの半分が標高差45メートルを埋める上り坂になり、甲子園への道のように険しい。

野原慎太郎監督(42)は自チームを「めちゃくちゃ弱いんですよ。みんな体も小さいし、中学で目立った選手は1人もいないです」とバッサリ行く。ただ「個性ですか? 愚直なところです。みんなでやろうという意識は強いですね」と全体力の高まりはほめる。

00年春、東海大相模で全国優勝したメンバーだ。筑川利希也投手がエースで、自身は背番号10の控え投手。甲子園登板はなかった。チームが全国的に注目された3年夏は、県大会の準々決勝で公立の神奈川商工に敗れた。

「2~3年くらい、みんな誰も直視できなかったですよね。考えたくもなかった。つらかったです。でもいま考えると敗因はあったし、ここにいる原体験の1つかもしれないです」

横浜国大に進学後、公立校の教師を志し「面白かったので」という家庭科教諭として、現在の横浜清陵で3校目だ。得意料理の焼きうどんはまだ部員たちには振る舞っていない。

「部活動とは」を追求し、高校生たちの自治を尊重する。秋や春の大会では、五十音順で背番号を渡した。「番号で先入観をつけることって、いい方向に向かないことも多いなと思いまして」。

21世紀枠候補に選ばれたけれど、新しく何かをするつもりは全くない。「何も変えずにやるだけです。“これまで”をこれまで以上に徹底するだけです」。強烈な坂を上り、練習後は今度は下って。そんな毎日を繰り返し、良き春を待つ。【金子真仁】

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