<日本ボクシング協会 大橋秀行会長(48)>
私は専大1年時の全日本選手権で敗れ、目指していたロサンゼルス五輪(84年)出場を逃しました。その後、プロで世界王者になれましたが、自分が置き忘れてきた物というか、五輪には特別な思いがあります。当時はメダルを取ることより、とにかく出場したかった。1964年の東京五輪は〝同級生〟ですし、20年に再び東京で開催されることは感慨深いものがありますね。
12年ロンドン五輪で村田(諒太)君が日本人で48年ぶりの金メダルを獲得し、ボクシング界が一気に注目されました。誰かが取るなら軽量級かなと思っていましたが、層が厚いミドル級で取るのは本当にすごいことです。まだ世間に伝わりきれていないと思うほどの大偉業なんです。
子供たちにとっても東京五輪は大きな意味があります。08年に日本プロボクシング協会が15歳以下の全国大会を作るなど、ジュニア世代の強化と底辺の拡大を目指してきました。かつての日本人選手は海外選手のテクニックに完封されて敗れる場面が多かったのですが、近年は幼少期からボクシングを続けてきた西岡(利晃)君や井上尚弥のように、技術で相手の技術を制して勝つようになってきたんです。世界王者と同じように「五輪で金」を目指す子供も増えてきました。
最近は、プロとアマの交流もさかんに行われるようになりました。プロのジムでアマ選手がスパーリングを行うのは、互いの強化にもつながります。私も現役時代に米倉会長から「アマの3回の動きが12回続けられれば世界王者になれる」と何度も言われていました。
村田君の影響で、五輪でのボクシングへの期待は高まっています。そういう意味では、次の16年リオ五輪も大切です。毎回メダルを取る競技になれば、注目度もさらに上がります。プロとアマが協力して強い選手を育てていくことが、ボクシング界の未来につながるのだと思います。
(2014年12月24日東京本社版掲載)
【注】年齢、記録などは本紙掲載時。