<車いすのサッカーS級指導者 羽中田昌(50)>
東京・江戸川区を拠点にする関東サッカーリーグ1部の東京23FCで、今季から監督をしています。来季のJFL昇格を目指して、現在リーグ戦は3勝2分けで2位につけています。
チームは毎日午前7時から9時まで練習し、終われば選手たちはそれぞれの仕事に向かいます。慌ただしい中ですが、好きなサッカーにひたむきに取り組んでいます。みんな仲が良く、まとまりのあるいいチームです。私も練習が終われば、トレーニングメニューの作成や試合分析と監督としての仕事をこなします。そして週末は欧州サッカーのテレビ解説もこなしているので、あまり寝る時間がないですが、充実した毎日を過ごしています。
我々が活動するこの東京に5年後、五輪とパラリンピックがやってきます。私は9年前にS級指導者ライセンスを障がい者として初めて取得しましたが、最近は環境面が整備されていることを実感しています。先日、西が丘(味の素フィールド西が丘)で試合をしました。以前にコーチをしていた東京・暁星高の時にはなかったスロープがあって、ロッカールームまでスムーズに移動することができました。ひと昔前までなら、いろんな人の手を借りて階段を下りていました。
これまで観客のためのアクセシビリティ(利用のしやすさ)は考えられていても、なかなか監督やコーチまでのものはなかったので、とても画期的なことだと思いました。ベンチに行くまでにどうやって移動しようか、選手たちの手をわずらわせたくない、などといろんな心配をしましたが、そういうことをあまり考えなくても済むようになりました。「ここまで来たんだからやるぞ ! 」って、より舞台に集中できるようになりました。
街に目を移しても、駅など公共施設でのバリアフリー化は目覚ましいものがあり、私が事故した30年も前とは全然違います。ただ世界中から障害のある方を迎えるに当たり、もっとスムーズに移動するための仕組みをつくっていかなければなりません。そういうのが財産となり、街の自然な姿になっていくはずです。2020年の大会は、高齢者や身体障がい者だけでなく、誰もが笑って過ごせる街づくりへのチャンスだと思います。(2015年05月06日東京本社版掲載)
【注】年齢、記録などは本紙掲載時。