<騎手/武豊(46)>
子供のころから五輪の種目に「競馬があったらいいのになあ」とずっと思っていました。馬術や競輪があるのだから不可能じゃないはずです。開催都市が追加種目を推薦できるという案があるのは知りませんでした。スポーツ全般が好きですけど、やはり五輪は特別な感じがします。自分も出場したいと思いますよ。選手村ってどうなってるの? とか4年に1回ってどういう気持ちなのかな? とかね。
競馬は何よりもルールが分かりやすい。世界中どこの国でも行われているし、1着2着はだれが見ても分かります。五輪で実施するなら3種目くらいで、芝2000メートルとダートと牝馬限定戦とかですかね。生産馬やジョッキーを国別で分けて。もしそうなったらドバイの王様とか本気で五輪を目指す人がいると思いますよ。発展途上国からの参戦もあるでしょう。五輪で金メダルを取った馬が種牡馬になったりして。
東京には東京競馬場という立派な競馬場があるので、新しく造る必要もない。五輪種目になれば何か新しい競馬の歴史というか、文化が生まれそうな気がします。週末のレースのほかに、五輪国内予選があったりして日本人ならだれにでもチャンスがあるわけだし。
3年前のロンドン五輪は現地で観戦しました。英国のアスコット競馬場で行われたシャーガーカップに参戦していた時でした。知人に日程を調べてもらって、女子サッカーの決勝戦のチケットが取れた。取った時は、なでしこジャパンが決勝に行くかどうかは分からなかったけど、決勝まで来てくれて。初めて生で見た五輪でした。米国に負けたとはいえ、銀メダルはすごく格好よくて誇らしかったのを覚えてます。
日本人からも声を掛けられました。妙な一体感のようなものも経験できました。「あれ !? なでしこの応援に来たんですか。すごいですね ! 」とか。いやいや、競馬で来たんだよって。
そう考えると五輪で競馬というのは、決して夢物語ではないはずです。
(2015年10月7日東京本社版掲載)
【注】年齢、記録などは本紙掲載時。