<日本スポーツ振興センター(JSC)理事兼新国立競技場設置本部長/池田 貴城氏(50)>
7月に文科省から内閣官房の新国立推進室へ異動、そして10月にJSC理事と2度、驚きました。8月に新国立の整備計画を策定した後、うすうす通常業務に戻るのかなと思っていましたから。
91年から94年ごろまでスポーツ業務に関わっていました。長野五輪の開催が決まったばかりで、今と同じような感じ。長野五輪の法案を担当しました。Jリーグの初代チェアマンとなった川淵三郎さんがご相談に来て、Jリーグを社団法人としてスタートさせようという時の担当係長でもありました。
新国立の前計画時の本部長よりは権限が集中しましたが、全権を握れる民間企業のプロジェクトマネジャーとはやはり違います。財源を持っているのは国と東京都ですし、できることには限りがある。しかし、私はもともと、文科省の職員ですし、内閣官房では遠藤五輪相の直属の部下でした。何かあれば内閣官房に飛んでいって協議できる。そういう意味では良い人事かもしれませんね。
旧計画は夢はあったと思いますが、いろいろ詰め込みすぎてしまった。今回は競技機能に限定した。1550億円でも高いという人はいるかもしれないが、結構絞り込めたと思う。
新競技場も旧競技場と同様、神宮の調和を考えたものにすべきだと思います。米国では五輪後に野球場にして採算性を考えるなどありますが、レガシーということを考えますと今の案が妥当なのかなと思います。新整備計画に「サッカーW杯に対応できるもの」と書いているため、五輪後に野球場にしてサッカーができない競技場に改修するというのは考えられない。
大会後利用のビジネスプラン公募については内閣官房で検討している最中。建設業者は年末までに決まりその後、基本・実施設計に取りかかりますが、ビジネスプランの公募はそこに間に合いません。
20年時の新国立は、競技機能に限定しているため、そのままでは民間が入っても経営を成り立たせるのは難しいでしょう。ロンドンを見れば骨格さえ造っておけば、後で増設したり、使い勝手を変えられる。韓国のある競技場でも後からシネコンなどを入れ、商業的に成功していると聞いている。大会後、ある程度の修繕費をかけて商業施設を入れていかないと。我々としてもシミュレーションに取り組もうとしています。
(2015年11月11日東京本社版掲載)
【注】年齢、記録などは本紙掲載時。