<WOWOW編集局プロデューサー/太田慎也(37)>

 WOWOWでは来年から20年にかけて、国際パラリンピック委員会の協力をいただいて障がい者スポーツ界で活躍するトップアスリートの姿に迫るドキュメンタリーシリーズを制作していくことになりました。

 競技結果はニュースや中継があるので、裏側にある物語であったり、選手が背負っているものを掘り下げて、これが世界最高峰の人たちですっていうのを視聴者にお届けしたいと思っています。

 今、世界中の選手を見たり、調べたり、会ったりしているところです。国内の競技会を回り、10月にはカタールのドーハで陸上選手権を見てきたところです。実はこの企画が立ち上がった時は、僕も国枝慎吾さん(31=プロ車いすテニス選手)とオスカー・ピストリウス(31=南ア、両足義足の陸上選手)くらいしか知らなかったんですね。でも、調べてみると世界各地にスーパースターがゴロゴロいる。

 7月にスコットランドで世界水泳があったんです。そこにも圧倒的な人たちがいっぱいいたんですね。ロンドン・パラリンピックでスーパースターになったイギリスの女性エリー・シモンズへの観客の歓声。パフォーマンスもすごいし、カリスマ性もある。

 アメリカのジェシカ・ロングという女性は膝から下がないんですが、泳げば金という人です。ベラルーシのイハール・ボキという男性は視覚障害があるんですが、泳げば世界新です。スター性もあり、実績も素晴らしい。何より競技として熱い。これは伝えなくてはいけないと思いましたね。

 3年前にロンドン大会を経験したイギリスだからというのもあったと思います。パラスポーツを見る素養があるというか、お客さんも騒ぎ方が分かっている。スポーツ観戦としてちゃんと成立している。日本でもパラスポーツの大会はあるんですけど、お客さんがもうひとつ距離感をつかめていないと思います。お客さんの方でバリアーを張っている。

 スコットランドの大会では、選手の方にも「私がトップアスリート」という立ち居振る舞いがありました。「障害」があるとすれば、見る方の心の中にあるんだな、と。金メダルを取って喜ぶ顔を見ていたら、この人たちは僕の何倍も人生楽しんでいるな、と実感しました。アスリートとしての純粋なかっこよさですね。少なくとも日本の感覚を変えていきたいし、世界にもまだでこぼこあるので、その価値観を変えていきたいというのが今の思いです。

(2015年12月23日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。