<アルペンスキー座位W杯総合2連覇 冬季パラリンピック4大会連続出場 森井大輝(37)>
シーズンの大半を欧州で活動しています。各国の都市、特に旧市街は歴史的な建物が並び、街路のほとんどが石畳。とても美しい街並みですが、障がい者には優しい街ではありません。
例えばオーストリアのインスブルックの旧市街も同じです。そこで車いすの僕が歩道と段差があるお店に入れなくて困っていると、必ず近くにいる人が声をかけてくれる。それを合図に2~3人が集まって車いすごと持ち上げてくるんです。街のバリアーが声をかけられた瞬間にバリアフリーに変わるんですね。
東京都内で僕が困っていても、声をかけられることはあまりありません。逆にこちらから手助けを求めることもあります。東京の街は欧州と違ってハード面は改善されていくでしょう。ただ、人の心の部分も変わってほしい。健常者と障がい者がもっと歩み寄れれば、より生活しやすい街になるはず。世界から訪れるパラアスリートや障がい者を心のバリアフリーで迎えられたら…。東京大会の成功のカギはこのあたりにあると思います。
僕はW杯総合で15~16、16~17シーズン2連覇を達成できました。でも、パラリンピックでは02年ソルトレークシティーから14年ソチまで4大会連続で出場しながら金メダルを取れていません。日本のパラスポーツの強さを世界に印象づけるためにも、来年3月の平昌では絶対に勝ちたいと思います。
今の僕には全5種目(滑降、スーパー大回転、大回転、回転、スーパー複合)で勝てる可能性があると思っています。W杯3連覇も魅力的ですが、やはり金メダル。メディアでの取り上げられ方も絶対に違うと思いますから。
僕だけではありません。同じ座位には狩野亮、鈴木猛史という強い選手がいます。平昌で狩野はスーパー大回転3連覇、滑降連覇、鈴木が回転で連覇を狙っています。何か、僕が一番ダメなんですけどね(笑い)。僕たちは同じ技術、情報をベースにチームで戦い、勝つ意識を持ち続けて強化してきました。だから僕がダメでも彼らが金メダルを取ってくれたんです。
日本チームで金メダルを独占、表彰台を独占をするつもりで、一体となって戦えるようにしっかり準備を進めていきます。東京へ向けて勢いをつけるために頑張りたいと思います。
(2017年7月12日東京本社版掲載)
【注】年齢、記録などは本紙掲載時。