中学生で陸上を始めた時は、スポーツの魅力や本質といったことには興味がなかった。関心は頑張って、結果が出るという自分のことばかり。今、思い返せば、00年シドニー五輪で高橋尚子さんが金メダルを取り、日本中が熱狂した時期のあたりから、スポーツはいろんな人の心を動かせると感じ始めた。
16年リオデジャネイロ五輪に出て、200メートル予選落ちと結果は悔しかったが、継続してきた努力が成果となり、出場できたことには意味を感じた。また日本選手権で左太ももを肉離れして、五輪までひと月半しかない中で、本当にいろんな方の協力があって、スタートラインに立てた。あらためて周りの方のサポートを感じ、その大切さに気が付くことができた大会だった。頑張ることで、周囲の人も喜んでくれた。
初めての五輪だったリオは30歳。一般的にはピークを過ぎているかもしれないが、年齢=競技年齢ではないと思っている。人によって、どこがピークになるかは正直、分からない話。競走馬は調教で1日1、2本とかしか全力で走らないと聞いたことがあるが、あれだけ走れる。自分にはやらされてやるスタイルより、必要なものを必要なだけ、ちゃんと練習すれば走れると感じている。集中してのダッシュは1日2、3本という効率を求めたトレーニングスタイルは、競技人生を長く続けられている1つの要因でもあると思う。
去年の世界選手権男子400メートルリレーで銅メダルを獲得してから、競技を普及できるチャンスは以前より増えたと思う。1つの結果が出たことで、多少なりとも説得力、影響を与えることができるようになったかもしれない。
今はお客さんで陸上競技場をいっぱいにすることが1つの目標。自分自身ができることをしていきたい。東京五輪へ向けて、とりあえず競技を見に行こうという形ではなくて、東京五輪も関係なしに、単純に競技を応援する気持ちを持ってもらって、競技場が満員になるのが一番いいのかなと思う。そういう形に陸上競技をしていきたい。
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