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ブレイキン男子
初採用の競技の金候補SHIGEKIX、音と融合のフリーズは必見
歌うように踊り、止まる。初採用となるブレイキン(ブレイクダンス)の男子で、金メダル候補の半井重幸(21=ダンサー名・SHIGEKIX)は自身のスタイルを「ミュージカリティー(音楽性)と高い技術の融合」と表現する。即興で流れる曲と体の動きが一体化する「音はめ」の能力は群を抜き、体が凍ったように静止する「フリーズ」は特に必見だ。
1対1のダンスで戦う新競技。立ち踊りの「トップロック」、手をついた状態でステップを踏む「フットワーク」、背中や頭を軸に回転する「パワームーブ」、そして「フリーズ」の要素で構成され、独創性や技術、音楽性などの項目で採点される。
頭などを軸に高速回転しながら足を前後左右に動かすなどして音とシンクロ。アクロバティックな動きから音が途切れる瞬間に合わせて片手だけで倒立してピタリと止まるなど、フリーズは極めて高い身体能力が要求される。日本代表の石川勝之コーチは「バランスも大事だし、力がないと(動きは)止まらない」と舌を巻く。
優勝してパリ五輪切符を獲得した昨年の杭州アジア大会決勝でも「音楽性」の項目で多数のジャッジに支持された。半井は「音楽に合わせるというより勝手に体が認識し、自然と動く。毎日音楽を聴き、囲まれる生活の中、自然と音が入るようになる」。要所で精度の高いフリーズを織り交ぜて勝利をたぐり寄せた。
子どもの頃から、出身地の大阪の街中で踊る日々を過ごした。ダンサーが集う「聖地」と呼ばれる大阪市浪速区にある広場では、誰かが持参して流した音楽に、その場に集まるみんなが合わせて踊るスタイルが取られていた。
「その日に誰がそこに集まってくるか分からない。かける人によって音楽が変わってくる状況で、そこに合わせるのがすごく楽しかった」。どんな曲調にも瞬時に対応することで、「音が体に入る」という能力が身についたという。
石川コーチが「オールラウンド。全てのカテゴリーで実力が高い」と評するように、半井はあらゆる面でレベルの高い選手だ。その中でも、特に「音はめ」については「自然と音にはまる。(曲の歌詞で言えば)『あなたを』で踊りが終わったりせず『あなたを愛している』でしっかり終わる」と、独特の言い回しで日本のエースの踊りの緻密さを表現した。
過去のダンサーにはない高難度の動きを実現できているのは、高い身体能力を備えているからでもある。「極限状態というか、何も考えられないぐらいきつい」と妥協のない筋力トレーニングで追い込むとともに、食事内容にこだわって肉体を改造。育ったストリートの環境と、徹底した自己管理で磨いてきた武器が頂点への切り札となる。
半井重幸(なからい・しげゆき)
2002年(平14)3月11日、大阪狭山市生まれ。
7歳でブレイクダンスを始める。11歳で世界大会に出場。18年10月ブエノスアイレスユース五輪で銅メダル。20年全日本ブレイキン選手権で日本一、同年「Redbull BC One World Final」で最年少世界一に。166センチ、58キロ。姉はブレイクダンサーAYANEこと彩弥。