【指名漏れ/箱山遥人の場合】健大高崎→トヨタ自動車「逆に良かったんじゃないか」 

運命とは時に残酷なもの―。プロ12球団から調査書が届き「高校生NO・1捕手」と言われていた健大高崎・箱山遥人捕手(3年)がNPBドラフト会議で指名漏れしました。

社会人野球の強豪・トヨタ自動車で成長を誓う18歳に「あの日」「あのあと」を振り返ってもらいました。

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◆箱山遥人(はこやま・はると)2006年(平18)4月26日生まれ、東京都足立区出身。中学時代は江戸川中央シニアで全国大会3位を成し遂げ、健大高崎へ入学。甲子園には3度出場し、3年春に優勝。高校通算35本塁打。176センチ、85キロ。右投げ右打ち。

■「箱山君、なんで指名されなかったの?」

川崎・等々力球場の記者席がざわついた。どこかの記者が大きめの声で言った。「箱山がスタンドに応援に来てる」

探すと本当にいた。

10月27日、秋季関東大会の初戦・霞ケ浦戦だ。ワイシャツにセーターを重ね、前から2列目で青いメガホンを2本持っている。

ドラフト直前も含め、何度か1対1で取材した。

でも18歳を相手に足がすくむ。いま声をかけて、その様子が周囲の観客に目撃されたら、きっと彼の迷惑になる―。

3日前、箱山はドラフト会議で最後まで名前を呼ばれなかった。

野球ファンに限らず、球界関係者にも一定の衝撃を与えた結果だった。


年末をもって退団するため、西武の渡辺久信GM(59)は今秋のドラフト会議には関わっていない。だから気になるようだ。

「箱山君、なんで指名されなかったの?」

なぜ箱山が―。

ドラフト会議終了直後から数日間、そんな話題がアマ野球関係者の中でも多かった。

最後の1年を新機軸バットで過ごしながら、高校通算35本塁打。強い二塁送球に、センバツ優勝に導いた強烈なリーダーシップ。

ただの「強肩強打」を超えた人材として、ドラフト前の面談の席でも「上位候補」という言葉を出したスカウトもいたほどだ。

渡辺GMも箱山を高く評価していた。

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1980年11月、神奈川県座間市出身。法大卒、2003年入社。
震災後の2012年に「自転車日本一周」企画に挑戦し、結局は東日本一周でゴール。ごく局地的ながら経済効果をもたらした。
2019年にアマ野球担当記者として大船渡・佐々木朗希投手を総移動距離2.5万キロにわたり密着。ご縁あってか2020年から千葉ロッテ担当に。2023年から埼玉西武担当。
日本の全ての景色を目にするのが夢。22年9月時点で全国市区町村到達率97.2%、ならびに同2度以上到達率48.2%で、たまに「るるぶ金子」と呼ばれたりも。