【九州Jクラブ漫遊記〈6〉北九州編】ピンチをチャンスへ ギラヴァンツは降格危機から立て直し
九州育ち、九州在住記者による「九州Jクラブ漫遊記」。第6回は、今季JFL降格危機にあるJ3ギラヴァンツ北九州です。J1上位をうかがうアビスパ福岡に比べて、予算規模、成績も苦戦が続きます。ホーム北九州市は人口100万人に近い福岡第2の都市。その潜在能力からして、逆襲の土壌はありそうです。今季の「若手」主体の編成から学んだ教訓から、独自のチームスタイル確立で、はい上がってほしい。
サッカー
■23年九州サッカー協会管内のJクラブ■
【J1=2チーム】
サガン鳥栖、アビスパ福岡
【J2=3チーム】
大分トリニータ、V・ファーレン長崎、ロアッソ熊本
【J3=4チーム】
ギラヴァンツ北九州、鹿児島ユナイテッドFC、テゲバジャーロ宮崎、FC琉球
J3残留するためには…
今季快進撃が止まらない福岡がルヴァン杯で初優勝した一方で、J3最下位で、JFL降格圏危機にある同じ福岡のギラヴァンツ北九州の成績不振が気になっている。
すでに最下位が確定。
22日には、スポーツダイレクター(SD)を兼務する小林伸二監督(63)の今季限りでの退任も発表された。クラブを通じて「今年はJ2復帰を目標に掲げてSDそして監督としてチャレンジをしましたが、達成することが出来ず、私の力不足と痛感しており大変申し訳なく思います」と謝罪した。
J3残留するためには、他クラブの結果次第となっている。日本フットボールリーグ(JFL)で、J3クラブライセンスを持つクラブが2位(JFL1位は自動昇格)になると、入れ替え戦に回る可能性がある。
ただ意地は見せている。
11月11日に行われた第35節のホーム岩手戦。
得意としている守備の背後を取る攻撃に加えて、これまで精度の低かったクロスからの攻撃も奏功した。相手に退場者が出た数的優位も生かして、今季最多6得点を奪って、9試合ぶりの白星を挙げた。
連敗も「6」で止めた。
「プラスもあるが、マイナスも出る」
小林伸二監督兼SDは「何かをやるとプラスもあるが、マイナスも出る。それを前進させるため、トライして行かないといけない」。試行錯誤の中から、ひと筋の光を見いだした試合でもあった。
だが、厳しい現実は認めざるを得ない。
「いけるかなと思ったが、(シーズン途中で)就任して、思うようにいかなかった。私もスタッフもなかなか、こういう厳しい経験はないが、こういうことを経験しながら、チームだったり個人が伸びて行けばいい。今年どうこうではなく、来年につながると、選手には常に言っている」。
アビスパ福岡から学べること
厳しいシーズンとなった。今季の成績低迷について、石田真一社長(54)は「今年は大学卒業の選手が多く、若い選手が多い中で、チームが勢いに乗れなかった」と振り返る。
22年度営業収入は約10億円で、トップチーム人件費は約3億円。同じ県内にある福岡は、昨年度売上高約28億円と、大きく差を開けられている。
来季に向けて10億円前後は維持したいかの問いに「そうですね。予算を組む中で、おっしゃられた額の規模感は念頭に置いています」。チームに大変革をもたらす大型補強とは無縁だ。
その中で、模範となるのが、Jリーグの先輩でもあり、予算規模100億円を目指す福岡から学ぶことも多いはずだ。
石田社長は「アビスパさんの取り組みについては、いろいろと学ぶことも多いと思います。なるべく早く、同じステージで戦えるようなクラブになって行きたい」とリスペクトしつつ、早く追いつきたい覚悟を示した。
小林SDが監督に復帰
今季は田坂和昭新監督(52)が就任。指揮官は、今年1月の新体制発表で「優勝が一番いいが、昇格できる位置でゴールを切れるようにしたい」と、2年ぶりの昇格を公言した。
パスサッカーをベースに「ショートパスでつなぐ崩しをアレンジしたい。ワールドカップじゃないが、ショートパスと縦に速いサッカーを想定している」。
22年W杯の日本代表を参考に目指す今季のスタイルを掲げた。
潤沢な強化費はなく、今季は、大卒やユースからの昇格など新加入10人を加え、平均23歳の「若さ」が最大の武器でもあった。
だが、結果がともなわず、最下位20位だった9月5日に田坂監督が辞任。
小林SDが、19~21年シーズン以来2度目の監督復帰となったが、11月5日の松本戦まで、6連敗など立て直せなかった。
大きく変えるチャンス到来
1947年創部の三菱化成黒崎サッカー部が前身だ。07年九州リーグ優勝で、08年からJFLに参戦した。09年は4位で終えたが、九州では5番目となる10年からのJリーグ加盟が承認された。
同年「ニューウェーブ北九州」から「ギラヴァンツ北九州」に改名した。
「ギラヴァンツ」はイタリア語の造語。北九州市の市花のヒマワリ「ジラソーレ」と前進する「アバンツァーレ」を組み合わせた。
だが、波乱のスタートだった。19位と最下位だったJ2初年度から毎年、下位に沈み、21年には2度目のJ3降格を喫した。天皇杯も8強が1度だけで、ほぼ2、3回戦で敗れている。
石田社長は「来季の体制はまだ話せる状態ではない。コメントは控えたい」と話した。クラブにとっては、再起のために何かを大きく変えるチャンス到来でもある。
福岡市博多区生まれ。93年入社。所属部署、担当歴は総務、整理、写真、報道、ソフトバンク、Jリーグ、高校野球など。
海外取材歴は写真部時代の00年シドニーパラリンピック、01年マリナーズ・イチローなど。15年九州写真記者協会・プロスポーツ組写真部門賞受賞。
スポーツ歴は野球、陸上中・長距離。大学で九州学生駅伝出場。