【吹奏楽の世界】箕面自由3年連続金〈1〉「お前はうまくなるよ」~その言葉を信じた

全日本マーチングコンテストの高校以上の部(11月17日、大阪城ホール)で、箕面自由学園(大阪)は困難を乗り越えて金賞をつかんだ。葛藤を抱えながらも憧れの場所にたどり着いた部員、始発に乗って朝から練習を続けた部員もいた。最後は全員の心が1つになった舞台裏を、2回連載で描きます。(写真は学校提供、敬称略)

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箕面自由学園吹奏楽部連載〈1〉

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箕面自由学園の第2話は13日(金)掲載予定

心が折れかけた時
思い出した言葉~

扉の向こうに輝く舞台が見えた。

そこは、憧れていた場所だった。

諦めようとしたことは何度もあった。

辞めよう-。

そうしたら、どんなに楽になるだろうか。

ただ、彼は吹奏楽部に残った。

辛うじてつながった1本の糸。

それは高校1年の時、練習中にふとかけられた言葉だった。

「2つ上の先輩から言われたことが、ずっと頭に残っていました。打楽器は8人いて、3年生から『お前はよく質問してくるから、一番うまくなるよ!』って。

僕は不器用なので対応できないことが多かった。怒られたら『嫌われているんじゃないか』って思ってしまう。ネガティブな考えが悪循環になって。もうヤバイなって時に、その言葉が浮かんでくることがありました」

3年になり、初めて立つ全国大会だった。

誰もが立てる場所ではなかった。

だからこそ、扉の先に見えた光景が忘れられない。

「景色がブワーッと広がっていました。初めて見る景色だった。新鮮で、『やっとここまで来れたんだ!』って。結局、僕はこの学校が好きだった」

80人もの部員が6分間、心を1つにする。

それは見る者の心を激しく揺さぶった。

たくさんの個性が1つになった瞬間。

部員1人、1人にドラマがあった。

〈全日本マーチングコンテスト結果〉

【金】

 活水中高(長崎)、滝川第二(兵庫)、精華女子(福岡)、東海大付高輪台(東京)、神村学園中高(鹿児島)、箕面自由学園(大阪)、市立柏(千葉)、京都両洋(京都)、習志野(千葉)、伊奈学園総合(埼玉)、京都橘(京都)、熊本工(熊本)、玉名女子(熊本)

【銀】

 愛工大名電(愛知)、早稲田摂陵(大阪)、叡明(埼玉)、東農大二(群馬)、出雲北陵(島根)、金沢学院大付(石川)、安城学園(愛知)、聖ウルスラ学院英智(宮城)、九州産大九産(福岡)、広島翔洋(広島)、松江商(島根)、富山商(富山)

【銅】

 白子(三重)、高知学芸(高知)、松戸六実(千葉)、市立船橋(千葉)、出雲商(島根)、多賀城(宮城)、春日井西(愛知)、遠軽(北海道)、仙台向山(宮城)、江南(愛知)、城ノ内中等教育(徳島)

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編集委員

益子浩一Koichi Mashiko

Ibaraki

茨城県日立市生まれ。京都産業大から2000年大阪本社に入社。
3年間の整理部(内勤)生活を経て2003年にプロ野球阪神タイガース担当。記者1年目で星野阪神の18年ぶりリーグ制覇の現場に居合わせた。
2004年からサッカーとラグビーを担当。サッカーの日本代表担当として本田圭佑、香川真司、大久保嘉人らを長く追いかけ、W杯は2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、ラグビーW杯はカーワンジャパンの2011年ニュージーランド大会を現地で取材。2017年からゴルフ担当で渋野日向子、河本結と力(りき)の姉弟はアマチュアの頃から取材した。2019年末から報道部デスク。
大久保嘉人氏の自伝「情熱を貫く」(朝日新聞出版)を編集協力、著書に「伏見工業伝説」(文芸春秋)がある。