なでしこのエースFW大儀見優季(27=ウォルフスブルク)の原点は、サッカー経験のない父永里正彦さん(54)の指導にある。
大儀見は小学1年の時、神奈川・厚木市の林SCでサッカーを始めた。このクラブは正彦さんが、兄源気(現タイ1部ラーチャブリー)の入部とともに“お父さんコーチ”として指導者を開始したクラブだ。
のべ1000人超の小中学生を指導した正彦さんは、野球、ソフトボール、柔道、バスケットボールなどの経験はあるが、サッカー経験はない。だが、「経験者じゃない人が教えるサッカーは視点が違うし、大切なサッカーの1つになる可能性がある」と言う。
母美智子さん(52)は秋田・大曲高時代にバスケットボールで国体などに出場した経験を持ち、妹永里亜紗乃(26=ポツダム)を含めて家族5人はバスケに興じることも多かった。「バスケもオフ・ザ・ボールの動きが大事で、局面では1対1の連続。ちょっと肩を動かせばフェイントになるし、優季によく言うのは『(敵の横に)25センチの隙間があれば1対1に勝てるだろ』っていうこと。肩を入れてしまえば抜けますから。彼女はそこを理解している」と正彦さん。1対1に強く、すぐゴールを向く姿勢はバスケで養われた。
幼稚園で体操クラブに通っていた大儀見に、サッカーをやらせたのは正彦さんだった。「優季に何かを強制したのはあの時だけ」と笑うが、サッカーを強制しながら「サッカーだけじゃない」環境も提供したことが現在の大儀見の原点になっている。【千葉修宏】