イングランドが空中戦でスウェーデンから2点を奪い、快勝した。

 先制点は前半30分にCKから。身長193センチのDFマグワイアがマークについたスウェーデンMFフォシュベリを弾き飛ばし、高さを見せつけてのヘディングシュートだった。フォシュベリは身長179センチ、大柄なスウェーデンにあっては小柄な部類で、この場面は完全なミスマッチが招いたゴールだった。空中戦をストロングポイントとするスウェーデンだけに、与えた精神的ダメージは大きかった。

 イングランドは攻撃選手が列をつくり、マンマークをしづらい陣形を取った。そしてボールが蹴りだされる瞬間、各選手が列を崩してばらける。そこへ鋭く正確なボールが入った。今大会のポイントとしては、ルール改正でVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が導入されたことが大きい。セットプレーでは完全に攻撃側が有利となっている。CKとなれば相手選手をつかみにいくところだが、判定が厳しくなったため、つかみにいけない。そこを巧みに研究し、イングランドはセットプレーを得点に結びつけている。

 イングランドの2点目は、右サイド奥の位置でのDFトリッピアーが味方シュートのこぼれ球を拾ったがそのままクロスを入れず、後方のMFリンガードへとボールを戻した。そこからファーサイドへ大きな浮き球を送ると、フリーとなったMFアリがヘディングで決めたもの。

 この場面もそうだが、イングランドはサイドへ持ち込んでも簡単にはクロスボールを入れなかった。相手守備の状況を見て、相手陣形が整っていれば無理には攻めきらない。いったんボールを下げてやり直している。このボールを下げるタイミングで、スウェーデンがDFラインを押し上げることを見逃さなかった。その背後へ入れ替わるように2列目の選手が入っていく動きが、この2点目でもあった。

 イングランドは世代交代が進み若い選手が多いが、戦術理解度が高く穴がない。サウスゲート監督は2013年からU-21代表の監督を務め、2016年9月に当時のアラダイス監督が解任されたことで、監督に昇格した人物。U-21代表時代から選手とコミュニケーションを図り、そこから選手を引き上げてきたという背景がある。チームは監督の考えをよく理解し、信頼している。また、エースFWケーンの得点力に頼ったチームでなく、総合力で戦えているからこそ、着実にここまで勝ち上がってきた。

 次の準決勝の相手はクロアチア。1次リーグではアルゼンチンに快勝するなど強さを見せた。ただ、ロシア戦を見る限り、チームの心臓となるMFモドリッチに疲労の色が見え、相手選手のプレーに置いて行かれるという珍しいシーンも見えた。ロシア戦でも延長戦で勝ち越しながら追いつかれ、PK戦で辛うじて勝った。チームとしてもコンディションに不安を残している。逆にイングランドは難敵スウェーデンを完封し、試合内容も完勝だった。イングランドが有利な立場にいるように思う。(永井雄一郎=プロサッカー選手、元日本代表)

スウェーデン対イングランド 前半、ヘディングで先制ゴールを決めるイングランドのマグワイア(左端)(撮影・江口和貴)
スウェーデン対イングランド 前半、ヘディングで先制ゴールを決めるイングランドのマグワイア(左端)(撮影・江口和貴)