- 準々決勝 ブラジル対ベルギー ブラジルを破りベスト4進出を決めたベルギーイレブンは、サポーターに勝利の報告(撮影・PNP)
ベルギーが覚醒した。王国ブラジルを圧倒して、2-1で完勝。日本代表DF長友は「俺らこんな怪物たちに真っ向勝負挑んでたんか…」とツイートした。多くの日本人も同じ思いになっただろう。その怪物を眠りから目覚めさせたのが日本だとしたら、あの悔しい敗戦も少しは報われる。
西野監督は2点のリードをした後「本気のベルギーがいた」と話したが、この日は試合開始から「本気」だった。日本戦の反省を生かして守備を変更。ウイングバックの裏をケアし、DF間の距離を狭めるために3人から4人に増やした。
さらに、日本戦途中出場でゴールを決めたフェライニとシャドリを先発起用。194センチのフェライニをボランチに入れ、ルカクを右に張らせて相手の攻め上がりをけん制した。香川や乾にDFラインの前を自由に使われ、簡単に長友の攻め上がりを許した反省かもしれない。選手起用や布陣、戦術面で、日本戦で見えた弱点を修正したのだ。
デブルイネは日本戦後に「日本から多くを学んだ。これを次の試合に生かしたい」と話した。メルテンスは交換した長友のユニホームをインスタグラムで紹介し「特別な場所に飾る」とコメントした。ただ、ベルギーが日本から得たのは、戦術面だけではなかった。
ブラジル戦前、マルティネス監督は「黄色いユニホームを見ると、気持ちで負ける」と話した。最後に勝ったのは53年前、6度目の優勝を狙う候補筆頭に対して、ワールドカップでは32年前の4位が最高と「格」の違いは明らかだ。しかし、どんな相手でも気持ちで負けることなく、チーム一丸で戦う大切さは日本に学んでいた。
「個の力」ばかりが話題になるが、チームの団結力は試合後の円陣でもよく分かった。日本との戦いを経て、戦術的にも精神的にも覚醒したのだ。長丁場のワールドカップ、優勝するチームには必ずターニングポイントの試合がある。ベルギーにとって、その1つは間違いなく日本戦。もし日本戦がなかったら、ブラジルには勝てなかったように思う。
それにしても、デブルイネ、アザール、ルカクという前線の「DHL」は驚異的だ。しかも、チームのために献身的に走り、最後までチームの戦い方を守り抜いた。「赤い悪魔」に「サムライブルー」が見えた。ベルギーを心から応援したくなった。
【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIの毎日がW杯」)
- 準々決勝 ブラジル対ベルギー イレブンに指示を出すベルギーのロベルト・マルティネス監督(撮影・PNP)
- 準々決勝 ブラジル対ベルギー ブラジルを破りベスト4進出を決め抱き合って喜ぶベルギーGKティボー・クルトワ(右端)らイレブン(撮影・PNP)