W杯には「自国監督でないと優勝できない」というジンクスがある。過去優勝した20チームも、すべて自国の監督が率いていた。今大会出場32チームのうち外国人監督に指揮を託したのは13チーム。すでにベルギー以外は敗退している。
日本が「コミュニケーション」を問題視して大会直前の監督交代に踏み切ったように、代表チームでは監督と選手のコミュニケーションは重要になる。練習、試合と日常的に行動をともにするクラブと違い、代表は時間が限られる。短い時間で相互理解するにはコミュニケーションが重要。言葉が成績のカギを握る。
さらに、文化の違いも大きい。1カ月の長丁場、選手たちの考え、根底にある国民性が理解できないと、心身ともに選手のコンディショニングを良好に保つことはできない。アフリカ勢などが外国人監督と内紛騒ぎを起こすことは、W杯の恒例にもなっている(今回はなかったようだが)。
強豪国は人材も豊富で自国以外から監督を招かないのも事実。最多5回優勝のブラジルや、4回制覇のドイツは、外国人に代表の指揮を託したことはない。その必要がないし、強豪国としてのプライドもあるだろう。これが、ジンクスの最大の理由かもしれない。
もっとも、近年は少し状況が変わってきた。プライドが高い「母国」イングランドも01年にスウェーデン人のエリクソン氏を代表監督に招いた。プレミアリーグも近年はフランス、スペイン、ドイツと外国人監督が多い。欧州の強豪リーグでは、選手とともに監督も多国籍化している。「外国人監督のW杯制覇」があっても、不思議ではない時代になっている。
かつて指導者の最終目標は代表監督としてW杯優勝することだった。しかし、今は代表監督よりもビッグクラブ監督の方が評価される。とはいえ、欧州CL優勝監督は毎年1人でるが、W杯優勝監督は4年に1人だけ。34、38年大会を連覇したイタリアはポッゾ監督が率いたから、過去19人しかいない。20人目のW杯優勝監督は誰なのか。残り4試合となったW杯の見どころの1つでもある。
【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIの毎日がW杯」)
- フランスのディディエ・デシャン監督は指示を出す(2018年6月16日撮影)