テレビ画面にくぎ付けになってしまった。

 ついにミック・ジャガーが姿を見せたのだ。英国の人気バンド、ローリング・ストーンズのミックは、大のサッカー好きで知られる。過去の大会でも「常連」。マラドーナらと並んで、ワールドカップ(W杯)の「スタンドの顔」でもある。

 国際映像が「抜く」のにも理由がある。「ミックが応援したチームは負ける」というジンクスがあるからだ。注目されたのは10年南アフリカ大会、応援するチームが次々と敗退し「ミックの呪い」と言われた。

 前回14年ブラジル大会では、さらにパワーアップ。応援していた母国イングランドは早々と敗退したが、準決勝に「初登場」。カナリア色のユニホームを着た息子とブラジルを応援すると、ドイツに1-7と惨敗した。メディアやファンは「呪いだ」と騒いだが、本人は「1点目は俺のせいでもいいけど、あとの6点は知らない」と、ジョークで無関係を強調していた。

 W杯には「呪い」が数多くある。バロンドール獲得者は翌年のW杯で優勝できない「呪い」、他国監督に率いられた代表チームは優勝できない「呪い」、南米での大会では欧州勢が、欧州での大会は南米勢が力を発揮できない「呪い」…。都市伝説のように伝わる「呪い」にも、それぞれ理由はある。聞けば「なるほど」と分かるものばかりだ。

 しかし「ミックの呪い」だけは説明がつかない。あえて言えば、一押しの母国イングランドが近年の大会で好成績を収めていないことぐらいか。本人はサッカーが好きで見に来ているだけ。毎回、W杯期間中はツアーの時期でもあるが、W杯の試合日程に合わせてツアーを組み、終盤は必ず会場に来て応援している。

 もちろん、応援したチームが負けることもあれば、勝つこともある。すべて負けているわけでもない。しかし、98年フランス大会のイングランドがベッカム退場で敗れた試合など、大会史に残る試合の会場にいるから「呪い」が強調されて伝わる。ただのサッカー好きな74歳なのに…。

 もはや、世界中のファンが動向を気にしている「W杯レジェンド」のミック・ジャガー。これだけ騒がれるのに、観戦は欠かさない。「そこまで言われて、なんでスタジアムに行くの?」と聞いてみたい。きっと「It’s only Football(But I like it)」(確かに、たかがサッカーさ。でも、好きなんだ)と答えるのだろうけど。

【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIの毎日がW杯」)