<欧州選手権:イタリア2-1ドイツ>◇準決勝◇28日◇ワルシャワ
お騒がせ男FWマリオ・バロテリ(21)が、イタリアを3大会ぶりの決勝へ導いた。準決勝ドイツ戦で、身体能力の高さを武器に2得点を挙げ、勝利の立役者となった。「悪童」と呼ばれ、起用は成果とトラブルが表裏一体と言われる中で、見事に期待に応えた。7月1日の決勝では68年大会以来44年ぶりの優勝をかけて、連覇を狙うスペインと対戦。バロテリは早くも「2点と言わず、4点取りたい」と宣言した。
驚異的な身体能力だ。前半20分、FWカッサーノのクロスに、前にいる相手DFより頭1つ抜け出すジャンプ力でヘッド弾。同36分には自陣深くからのロングボールに、鋭く飛び出して相手守備陣の裏に抜け、振りの速いシュートで豪快にネットに突き刺した。あまりの速さに相手GKノイアーは手を出しかけて、見送るしかなかった。この時点で流れは決まった。バロテリは思わずユニホームを脱ぎ、仁王立ちした。
「素晴らしい夜だ。一番感動した試合だ。この2ゴールを母にささげたい。家族を喜ばせることができてうれしい」。ガーナの血を引き、誇りを持っている。「決勝には父も観戦に来るから、2点といわずに4点決めたいね」と言い放った。
所属するマンチェスターCでの活躍など、潜在能力の高さを認められながら、異名は「悪童」。花火遊びでぼや騒ぎを起こしたり、ピッチ内外での奇行や過激発言が、英国メディアの標的になってきた。
今大会前には「人種差別的行為を受けた場合は大会を去る」と言って物議を醸した。実際に初戦スペイン戦では、猿の鳴き声をまねたやじを浴びた。第3戦のアイルランド戦で芸術的なボレーシュートを決めた後は、危ない言葉を口走りそうになったようで、察知した同僚に口を押さえられる始末。この日、ユニホームを脱いで警告を出されても、「あの行為に怒っている人がいるみたいだけど、オレの肉体に嫉妬しているんだろ」と言ってのけた。
そんなバロテリの起用は「吉と出るか、凶と出るか」と言われたが、大舞台で才能を爆発させ、優勝候補ドイツを打ち砕いた。まさにギャンブルに勝った形のプランデリ監督は「輝いていたね。彼のキャリアは始まったばかりだよ」とニヤリ。決勝に向けて最も勢いに乗ってほしい男が、最高に気分をよくしているのだ。これほど心強いことはない。
◆マリオ・バロテリ
1990年8月12日、イタリア・パレルモ生まれ。05年ルメッツァーネでプロデビュー。06年にインテルミラノに移籍し、10年からマンチェスターC所属。今季13得点を挙げ44季ぶりのリーグ優勝に貢献。ガーナ人の両親を持つことから、07年にガーナ代表に招集されるも拒否。08年にイタリア市民権を取得し、10年8月のコートジボワール戦で代表デビュー。代表通算13試合4得点。超人的なプレーから「スーパーマリオ」の異名を持つ。189センチ、88キロ。