<欧州選手権:スペイン4-0イタリア>◇決勝◇1日◇ウクライナ・キエフ
スペインが王者の風格を見せつけた。決勝でイタリアに大勝。ドイツと並ぶ大会最多の3度目の優勝を果たした。大会連覇も初なら、W杯と合わせた主要大会3連続優勝も初の偉業。世界最強と同時に史上最強チームを印象づけた。ビセンテ・デルボスケ監督(61)は「偉大なスペインサッカーの時代」とし、14年W杯ブラジル大会での「4大会連続優勝」への期待を抱かせた。MVPはアンドレス・イニエスタ(28)。次の16年欧州選手権はフランスで開催、出場16チームから24チームに拡大される。
スペインの貫禄勝ちだった。序盤から目まぐるしく人とボールが動いた。前半14分、イニエスタのスルーパスを受けたセスクが抜け出し、右からの折り返しにシルバが頭で合わせて先制。初戦でMF登録選手3人を前線に並べる「ゼロトップ」を初披露し、論議を呼んだ。その3人で主導権を握るゴールを生み、指揮官の正しさを証明した。
前半41分には鮮やかな速攻も決まった。DFアルバがMFシャビに球を預け、加速しながらゴール前へ走り込み、スルーパスを受けて追加点。今大会中はパス回しへの執着やダイナミックさに欠ける戦いぶりで、「退屈」とさえいわれたチームが、まるでこの日にピークを合わせたかのように躍動、真価を発揮した。
守っても相手の司令塔ピルロを自由にさせず、勢いに乗るFWバロテリにはスペースを与えない。今大会6試合をわずか1失点で終える強固さだ。
デルボスケ監督は「スペインの最高の世代による素晴らしいチームだ」と誇らしげに言った。優勝した08年大会、10年W杯、今大会と主軸は変わっていない。その強さの要因に同監督はバルセロナやRマドリードなどクラブの下部組織の充実を挙げる。「しっかりした基礎技術に加え、サッカーへの理解度が高い」。この日の先発でイニエスタ、アルバら6人がバルサの、GKカシリャス主将はレアルの下部組織出身だ。
また、多民族国家で、以前は地域による対立から選手もファンも地元クラブを優先。代表チームも個性の対立になりがちだったが、前回の優勝を機に国として一丸になったという。この日もセスクらは、スペイン各地で活躍して近年亡くなったプエルタ選手、ハルケ選手、ブレシアード氏(監督)、ロケ選手の名を記したTシャツを着て優勝を祝い、「この勝利を彼らにささげる」と話した。
「歴史的成功だが、今後を見据え、ブラジルを目指さなくては」とデルボスケ監督。2年後のW杯では円熟期を迎えているはずだ。