★首相・石破茂は少数与党で政権を引っ張らなければならないが、手法は「熟議」という対話路線だ。熟議という言葉は元官房長官・仙谷由人が07年11月14日の朝日新聞に寄稿した「今こそ熟議の民主主義を」がはしりだったのではないかと元秘書の来孝平がfacebookで指摘する。この頃はねじれ国会で仙谷の指摘通り、熟議のタイミングだった。自民党は熟議より国対政治を選択してかわそうとしたがかなわなかった。
★石破は状況こそ熟議に追い込まれたが、幹事長・森山裕は国対のプロだ。そもそも有権者はSNSに飛びつき、わかりやすく簡単な絵解きを望んでいて、熟議を望んでいない。すべてに石破の政治はずれていまいか。ジャーナリスト・北丸雄二は「短期的には寛容と不寛容が戦ったら、寛容は不寛容に寛容なのに対し、不寛容は寛容に不寛容であるから寛容は不寛容に勝てない」と指摘している。自民党には、熟議と寛容が必要なのではないか。代表質問で、石破は選択的夫婦別姓導入について「国民各層の意見や国会議論の動向を注視する必要がある」と慎重な姿勢を見せたが、既に自民党以外のほとんどの党が導入に賛成しており、自民党右派の反発をまとめきれない自民党の問題でしかない。国民世論も多くの世論調査で7割以上の賛成を得ている。そこはどうしても熟議という時間稼ぎが必要なようだ。
★一方、政治改革については「わが党としては企業団体献金自体が不適切であるとは考えておりません」と強い意思表示を見せた。石破がこだわった政治資金のデータベース化も自民党内では「一部のデータベース化」に矮小(わいしょう)化されそうで、30年かけても浄化できない自民党の「政治とカネ」は年内でまとめるという。都合のいい熟議だが、これでは野党の政治改革案を丸のみした方が熟議より効果がありそうだ。(K)※敬称略