先駆者の思い胸に 後輩に見せる金の背中

[ 2014年1月26日13時49分

 紙面から ]>拡大写真<連載:高梨沙羅

 初代女王のプレリュード第6回>

 「一番きれいなメダルを取りたい」。11年4月6日、国際オリンピック委員会(IOC)は14年ソチ五輪の新種目にジャンプ女子を採用すると発表した。この日、北海道・上川中の始業式に出席していた高梨は朗報を伝え聞くと、力強く金メダル取りを宣言した。

 一挙手一投足が注目される今でこそ、言葉が独り歩きしないようメダルに対しての思いをほとんど口にはしない。だが、当時は「1つ1つの経験を五輪につなげたい。夢が目標に変わった。今の目標は金メダルです」と、17歳3カ月で迎える五輪での日本人史上最年少(冬季)金メダルへの思いを語っていた。

 五輪は関係者の悲願だった。高梨の個人コーチを務める全日本スキー連盟の山田いずみコーチらが90年代から飛び続けてきた。大会に出場しても更衣室がなく「女子が出場すると面倒」との声が聞こえた時もある。それでも山田コーチらの懸命な取り組みが、00年3月に冬季では女子初の国内大会が開かれるまでに発展。五輪につながった。

 高梨には歴史を引き継ぐ覚悟がある。テレビで山田らの頑張りを見て「あんな格好いい選手になりたい」と憧れ競技を始めた。今度は山田や今も現役で飛び続ける吉泉(旧姓葛西)賀子(日本空調)ら先駆者たちの思いを胸に飛び、背中を見せる番だ。「先輩の姿を見て競技を始めたように、私の姿を見て競技に興味を持ってくれれば」。五輪金メダルは女子ジャンプの新たな道を切り開くと信じている。(つづく)[ 写真説明 ]山田コーチ(左)とともにソチ五輪での飛躍を誓う高梨

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