早くもパリ五輪‘’1次選考会‘’ レスリング全日本で代表争い始まる 3年間隔で苦しむ選手も
東京オリンピック(五輪)が終わって1年と4カ月、早くもパリ五輪の代表争いが始まった。22日から東京・駒沢体育館で行われたレスリングの全日本選手権は、パリ五輪「1次選考会」。激しい代表争いが始まったのだ。
もちろん、今すぐ五輪代表が決まるわけではない。選考対象となる大会は、来秋ベオグラードで行われる世界選手権。ただ、この世界選手権が五輪選考を兼ねるため、間接的に「パリ五輪選考会」になる。
世界選手権代表は今大会と来年6月の全日本選抜選手権で決まる。両大会優勝で代表に決定。優勝者が異なる場合はプレーオフになる。今大会で優勝すれば、世界選手権代表の座を半分手にしたことになる。
世界選手権では5位以内の国に、五輪の代表枠が与えられる。日本協会は3位以内の選手を五輪代表に内定するため、メダル獲得が濃厚な女子や男子の軽量級は世界選手権代表になることがパリへの近道。実際、19年の世界選手権で女子4人、男子1人が東京五輪代表に決まっている。
今大会では「波乱」もあった。東京五輪金メダルの女子53キロ級の志土地真優と62キロ級の川井友香子が準決勝で敗退したのだ。男子グレコローマン77キロ級銅の屋比久翔平も初戦で敗れた。
東京五輪の1年延期で、パリまでは3年。3大会連続五輪出場の経験がある日本協会の赤石光生強化本部長は「3年は短い。空回りしている感じの東京五輪代表選手もいた」と話した。
五輪で活躍した選手が、翌年休養するケースは珍しくない。レスリングや柔道など減量を伴う競技は体への負担も大きく、休みは重要。負傷や体力を戻し、コンディションを整えて2年前から次の五輪を目指す。
ところが、間隔が3年だと休養している時間はなくなる。川井友や屋比久の敗退は故障が原因。完治への時間があれば、結果は違っていたかもしれない。
東京五輪で連覇した後に結婚し、出産も経た女子57キロ級の川井梨紗子は復帰して59キロ級で優勝。「3年は短いけれど、私は忙しい方がいいので」と育児と競技の両立に前向き。志土地も「一気に行きたいので3年の方がいい」とパリへの巻き返しを目指した。
27歳の川井梨や25歳の志土地にとっては、次の五輪が早く来るのはプラス面もある。ただ、十分な休みがなければ体への負担が大きいのは間違いない。代表争いのライバルは、東京五輪代表を逃した時点で4年後のパリを目指す。4年計画と3年計画、一般的には準備期間は長い方がいい。
他の競技でもパリへの戦いが始まっている。苦しんでいる東京五輪代表も少なくない。選手のコンディショニング、強化計画など今後3年の間隔がどう響いてくるか。東京五輪が1年延期となった影響は、24年パリ五輪へも及んでいる。(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)