「私、失敗しないので」。米倉涼子演じる孤高のフリーランス外科医・大門未知子が強いまなざしで言い放つ、決めぜりふが、もう聞けなくなるのは寂しい。初の映画にしてファイナルと銘打った人気ドラマ「ドクターX」が12年間の歴史に幕を下ろす。

最終作では、失敗しない「ドクターX」がどうやって生まれたのか。どんな苦難でも、リスクを背負う覚悟はどこからくるのか。未知子が師匠と慕う神原晶(岸部一徳)との出会い、壮絶な半生が描かれる。

オペシーンの研ぎ澄まされた表情、さっそうと歩く姿、体調面の困難を乗り越え、最後の撮影に挑んだ米倉がパーフェクトな美しさで演じきった。院長回診、「いたしません」、論文の下調べ、「いたしません」。ブレない強さの秘密も明かされる。

10月に76歳で亡くなった西田敏行さん演じる、東帝大病院長・蛭間重勝の迫力と柔和な笑顔。硬軟自在の存在感は画面の中で健在だ。外科医、海老名(遠藤憲一)、加地(勝村政信)、原(鈴木浩介)の「御意三兄弟」のブレっぷりもいい。「私、失敗しないので」。このせりふにはたくさんの思いが込められている。【松浦隆司】

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