新年初のコラム。今年もどうぞよろしく。さて、2025年は戦後80年、昭和100年、阪神・淡路大震災30年…。さまざまに1つの区切りの年である。中でも感慨深いのは、私が生きてきた年月を同じくする、あの敗戦から80年である。
それに先がけて東京新聞は、昨夏の終戦の日から「同じ歳月を重ねた戦後とどう向き合ってきたかを語ってもらう」という趣旨で「昭和20年に生まれて Born in 1945」を随時連載。第1回は作家の池澤夏樹さん。年内最後は俳優の松島トモ子さん。私も11月に登板させてもらった。
3人はともに敗戦の1カ月前、昭和20年7月生まれ。当然、戦争の記憶はない。私に至っては、東京大空襲の後、静岡県三島市に疎開。そこで隣接する沼津の大空襲に遭って命からがら東京に逃げ帰った母親の話さえ戦争の苦労話の1つとしか受け止めてこなかった。
それもあって、連載の記事では<負の歴史教訓に 権力監視><報道への圧力、忖度に危機感>の見出しの通り、主に新聞記者時代に関わった「語り継ぐ戦争シリーズ」や、かつて先達が受けた言論弾圧の歴史について語らせてもらった。
そんな私にくらべて池澤、松島おふたりの話は胸に迫る。トモ子さんを身ごもって8カ月の母を置いて父が旧満州から出征したのは、敗戦の3カ月前。ソ連参戦でシベリアへ。母子が祖国に戻った時、祖母はトモ子さんを見て「干からびたカエルの子」と言ったという。酷寒の地での父の死を知ったのは、その4年後だった。
池澤さんは「基地を用意するということは裏を返せば挑発」と言って基地建設現場に自らも足を運び、基地反対の人々を「ずるずると戦争に行こうとする国の後ろ足にしがみついている」と高く評価する。
戦後80年のこの年、私もBorn in 1945の1人として、この国の後ろ足にしがみついてでも書き続けていきたい。
-戦争は絶対にするな。
◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。TBS系「ひるおび」東海テレビ「ニュース ONE」などに出演中。