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この日、阪神入団会見を行った楠本泰史がDeNAを自由契約になった際も、阪神入りが内定したときも、キッチリあいさつしてきたそう。それもあってか、阪神取材の周辺でウロウロしているこちらにそんなことを言ったようである。コーチとしてDeNAに残留する石井琢だが、来季は1軍ベンチには入らない模様だし「1軍で頑張れ」と激励の意味もあるのだろう。

こちらも楠本が自由契約になったときは「ほお。そうなんや」と思ったものだ。昨季までは2年連続開幕スタメンでもあったし、状態によっては、まだレギュラー格の選手ではないか。

それでも、そこは打線が充実しているDeNA。FA宣言せずに残留を決めた佐野恵太に加え、梶原昂希の成長、さらに度会隆輝もいる。なかなか試合に出る場所がなくなってきたという状況があるのだろう。

対して獲得した阪神である。投手中心、DeNAに比べて打線が強くない現状からすれば、いい補強になったと思う。今季を振り返っても左の代打はほぼ糸原健斗だけだった。島田海吏も頑張っていたが、やはり手薄な感じが否定できない。そこに状態がよければレギュラー格という楠本が加入すれば、心強いはずだ。

「スタメンで行ってナンボというタイプかなと思うけど代打もいけると思いますよ。性格もいいし、真面目だし。まあ、あえて気をつけてほしいところというのは…」。石井琢はそう笑いながら続けた。

「何というか理屈っぽいというかね。解説者みたいになるところがあって。例えば雨が降ってるときに凡打して『雨が目に入って』みたいな。言わんでエエんや、そんなことは…という感じですかね。まあ若い人によくいるタイプかもしれませんけど」

いわゆる「昭和型」でたたき上げスタイルの石井琢からすれば、つい“ダメ出し”をしたくなる部分もあったのか。球界だけでなく、なかなか分かる話かもしれない。来年は30歳になる楠本。特にDeNA戦で活躍して「古巣に恩返しです」と言う姿を見たい。（敬称略）【高原寿夫】（ニッカンスポーツ・コム／野球コラム「虎だ虎だ虎になれ！」）