「もったいない」。サッカー五輪代表の戦いぶりに、何度つぶやいたことだろう。

 チームはよく整備され、完成度は4カ国の中でも突出していたように思う。だが、初戦のナイジェリア戦は選手の足が地につかず、凡ミスを連発。内容で圧倒したコロンビア戦は、穴だらけの相手守備から、もう1点が奪えなかった。最終スウェーデン戦で、ようやく我に返ったのに、決勝トーナメントを経験できない。それがまた、もったいなかった。

 確かに健闘はした。随所にハッとする輝きも見せた。しかし、1次リーグ敗退の現実は重い。サッカーにとって五輪は世代育成の場。そこで敗退して「頑張ったな」などと肩をたたかれていては、さらなる成長は期待できない。この経験をW杯へつなげるためには、4点を返した、2点差を追いついた、欧州王者に勝ったなどという一片に目を濁らせることなく、大局的に分析する必要がある。

 「谷間の世代」といわれるチームを洗練された集団に変えてみせた手倉森監督の手腕は本物だろう。だが、3試合を通じて感じたのは、世界での経験不足。選手たちは明らかにナイジェリアの長い手足と、強い当たり、瞬発力に戸惑っていた。当たり負けとミスの連続が判断も狂わせた。結果的にこの出だしのつまずきが、最後まで尾を引いた。連係に意識がいきすぎたためか、球際の勝負に出遅れる場面も多かった。世界はもっとシンプルだった。

 ただ、今回の敗因を選手や監督だけに帰結してはいけない。私はもっと大きく、深いところにあるように思う。2年前、アジア大会でU-21(21歳以下)代表が準々決勝で敗れ、U-19(19歳以下)、U-16(16歳以下)代表もアジア選手権で8強に終わった。特にU-19世代は4大会連続でW杯出場を逃している。つまり、かなり前から日本の育成システムが世界に通用しなくなっていると考えるべきだろう。ジュニアの指導者養成を含めて、素材の育成について根幹から見直す時期にきている。

 各世代の代表選手の多くがJクラブから出ている。そのJリーグもACL(アジアチャンピオンズリーグ)で勝てない。選手たちの技術は向上したが、ボールを必死で追う姿が減ったように思う。戦う場面が少ないのだ。小手先の技術は世界には通用しない。欧州市場の金満化で世界クラスの助っ人は姿を消し、どこのクラブも出費を削って戦力が均衡している。Jリーグの成長が止まり、こぢんまりとした印象を受ける。Jクラブはいわば日本サッカーの土台。そこが内向きに停滞していては、世界で戦える若手は育たない。

 最後に提案がある。日本代表と五輪の監督を一本化してはどうだろう。02年W杯まで4年間、フィリップ・トルシエ監督の担当記者として、チームづくりをつぶさに見てきた。彼は日本代表と五輪代表の監督を兼務して、同じ哲学と戦術を説いた。就任2年目までは伸び盛りのDF宮本、MF小野、稲本、FW柳沢ら若手強化に比重を置いて、00年シドニー五輪で8強進出を果たす。その2カ月後、五輪世代の9選手を日本代表と融合させてアジア杯を圧勝した。それが02年W杯の決勝トーナメント進出という快挙につながった。ところが、この成功例がその後、実践されていない。

 大きな転換期。新たな発想で未来に踏み出す前に、歴史のページもめくり返して見てほしい。【首藤正徳】