- 1階席のチケットを持たない観客も下りてきて通路が埋まってしまう「無法地帯」
<三須記者がリオで見る:カーニバルの光と影>
【リオデジャネイロ21日(日本時間22日)=三須一紀】南米初の開催となったリオ五輪が閉幕した。次の夏季五輪はいよいよ東京となる。プレ大会から学ぶものは何か。メイン会場となった五輪スタジアム(エスタジオ・オリンピコ・ジョアン・アベランジェ)の実態を見て、東京では何をすべきかを考察する。
日本が400メートルリレーで銀メダルを獲得した日、五輪スタジアムは「無法地帯」だった。1階席のチケットを持たない観客が、1階席の通路を埋め尽くした。見かねた軍隊が彼らを一掃したが、軍隊が撤収し、10分もすれば同じ状態。焼け石に水だった。
そもそもゲートでチケットを確認するボランティアが機能していない。1200レアル (約3万9000円)もする最も高いゾーンのボランティアは試合を観戦しているため、誰でも入れる状態だった。
これでは高価なチケットを買った人が損をする。東京ではボランティアに任せるのか、顔認証システムなどをゲートに設置するのかなどの検討が必要だ。
バックヤードの使い方もリオから学べる。広い通路に売店は少なく、品はビール、コーラ、スナック程度。有事の際、広いスペースは避難経路としては十分だが「おもてなし」の面で言うと物足りなさを感じた。
東京の新国立競技場では、食の豊富さや質を求め、グッズ売り場も充実させるべきだ。例えば、家族連れで観戦しに来た場合、奥さんや子どもが競技にあまり興味がない場合でも、何か楽しめる施設や料理などがあれば、スポーツ好き以外の集客も計算できる。五輪中はスポンサーの問題もあり簡単ではないが、50年使うのなら必要だろう。
案内板も不足。陸上種目のタイムスケジュールはホワイトボードに手書きだった。東京五輪大会組織委員会の担当者は「デジタルサイネージがなかった。東京では増えていくだろう」と話し、来場者に優しい会場を目指す。
最後にアクセス面。鉄道の駅がスタジアムの目の前にあったのは便利。しかし、目の前にあるスタジアムになかなか入れず、外周を半周ほどぐるり。セキュリティーチェックでは手荷物を検査する人としない人がいて「大丈夫か」と心配してしまった。2階席やVIPゾーンに行くには、らせん状の長い坂道を上る必要があった。タクシーは会場に近寄れず、競技後には少し離れた薄暗い住宅街で待たなければならなかった。
それでもリオ五輪は開かれたが、国の風土というもの。税金の無駄遣いは避けながらも、リオの反省を生かすべきだ。「TOKYO」に対する世界の期待は高い。(おわり)