- 機敏な動きを見せるG大阪MF井手口
<手倉森JAPANリオで金託された18人(16)>
「2人のためなら何でもできる」。最年少の19歳でメンバー入りを果たしたG大阪MF井手口陽介には、届けたい思いがあった。昨年末、同じ中学で同学年だった夏海さんと結婚。6月には娘の愛希(ひなの)ちゃんが誕生した。母亜紀子さん(49)は守るべき存在ができた息子陽介について「変わったと思う。表情が柔らかくなった」と優しい表情で語った。
福岡市出身のおとこ気あふれる「九州男児」。G大阪ユースに在籍していた高校時はやんちゃ盛り。それも、今は母も認める「イクメン」になった。自ら進んで車へ荷物を取りに行ったり、愛娘をお風呂に入れるのが日課。井手口は「嫁と娘のためならどんな苦しいことも乗り越えられる」と話す。それも、懸命に自分を支えてくれた母の思いが理解できたからだった。
井手口が小学1年の時。サッカーをしていた5つ上の兄稔さんが全国大会に出場した。亜紀子さんは全国のレベルを見て「サッカーで上を目指すなら九州を出た方がいい。陽介の可能性を広げたい」と決意。日本中で仕事ができる介護士の資格を取り、週6日、朝から晩まで働いた。井手口が月1回履きつぶすスパイクも笑顔で買い替えた。息子の将来のため。G大阪ジュニアユースの入団も亜紀子さんが勧めた。どこまでも付いていく覚悟だった。
井手口はG大阪ジュニアユースに入団するため、中学1年で福岡から大阪へ引っ越した。亜紀子さんは一緒に出てきてくれた。自らも父となった今なら、母の決心のありがたさが身に染みる。妻へ、娘へ、母へ。全ての感謝を胸に19歳MFはリオで輝く。【小杉舞】
◆井手口陽介(いでぐち・ようすけ)1996年(平8)8月23日、福岡市生まれ。G大阪ジュニアユースからユースへ昇格し、高2で2種登録。高2の14年3月にユースから飛び級でトップに昇格した。同年4月16日ナビスコ杯鳥栖戦で公式戦デビュー。J1通算21試合無得点。家族は夫人と1女。171センチ、71キロ。