- 試合に敗れ観客に向け手を振りながら引き揚げる日本の選手たち(撮影・清水貴仁)
夢の続きは東京で。新種目の7人制ラグビー男子で、日本はメダルを逃した。準決勝はフィジーに5-20で、3位決定戦は南アフリカに14-54で完敗。走り勝つスタイルで強豪国を撃破して、初実施の五輪で4位。15人制より“格下”とみなされ、国内クラブの協力が得られない逆境を乗り越え、新しい歴史を築いた。この快進撃で7人制を取りまく環境が変われば、20年東京五輪でのメダル獲得が現実味を帯びてくる。
メダルをかけて、戦い終えた30分後。デオドロ競技場の通路脇で最後の円陣が組まれた。30歳の桑水流(くわずる)主将が口を開いた。「メダルまであとちょっと。7人制が好きだから、灯を絶やさないでほしい」。強豪国を次々と撃破して4位。7人制の歴史をつなぐ役割を次代に託した。
届かなかった。フィジー戦はタックルで相手を倒しきれずに敗戦。3位決定戦は15人制が昨年W杯で金星を挙げた南アフリカと対戦。後半開始直後まで14-21と粘ったが、力尽きた。瀬川ヘッドコーチ(HC)は「相手の前に出るスピードが上だった。まだまだ差がある」。「走り勝つ」スタイルに持ち込めなかった。
銅メダルマッチの入場直前。桑水流の目に涙が光っていた。「7人制は15人制の陰に隠れて、恵まれない環境で練習してきたことが頭に浮かんだ」と言う。
国内は15人制が優先。あるクラブ関係者は「15人制なら代表として出せるが、7人制には出せない」といい、選手からも「セブンズなんて」という声があった。今年1月の代表合宿は参加6人でチームが組めず、体力強化で終わった。瀬川HCが「ようやく人数がそろいました」と嘆くこともあった。坂井は「つらかった。メンバーがごろごろ変わって次につながらなかった」。
逆境を乗り越えて世界の4位になった。桑水流は言った。「7人制がニュージーランドに勝った。トップリーグや大学の監督が7人制にもっと積極的に選手を出す。そういう環境に4年かけて日本のラグビーがなってくれたらいい」。円陣の最後、選手たちは肩を組んで夜空に向けて、大声で歌った。「上を向ーいて歩こーう。涙がこぼれないよーうに」。リオで男たちが見た夢を日本全体で見る時、東京五輪でのメダルがぐっと近づく。【益田一弘】
◆上を向いて歩こう 1961年(昭36)発表の坂本九のヒット曲。別名スキヤキ。国内レコード売り上げが発売から3カ月間ランキングトップを独走、米音楽専門誌「ビルボード」のヒットチャートでも3週連続1位を記録した名曲。美空ひばりや桑田佳祐ら、数多くのアーティストがカバー。