<リオ五輪・男子7人制ラグビー:日本14-54南アフリカ>◇11日◇3位決定戦
五輪で初めて採用された7人制ラグビー。陸上や競泳などとは明らかに違う雰囲気の会場で、日本代表は堂々と戦った。3位決定戦では、昨年の15人制W杯の屈辱を晴らそうと気合を入れる南アフリカに完敗したが、競技の魅力は日本でテレビ観戦しているファンにも十分伝わっただろう。
100年以上の歴史と伝統を誇る15人制に比べ、日本での歴史は浅い。初めて代表が組まれたのは第1回W杯に出場した93年。まだ20年強しかたっていない。「伝統」を重んじる日本のラグビー界において、歴史のなさは致命的。理解されず、環境が整わなかったのも無理もない。
しかし、今回の結果で、確実に環境は変わる。次の東京五輪に向けて強化費は増えるだろうし、人気も高まるはず。応援する人が増えれば、非協力的だったチームも理解せざるをえなくなる。「五輪競技」に対して、ラグビー界も価値観を変える必要が出てくる。
高校ラグビーは15人の選手がそろわず、チーム数減少の勢いが止まらない。合同チームも増える一方だ。7人制が主流になれば手軽にチームが組め、ラグビー人口減少にも歯止めがかかる。19年W杯日本大会後、主流が7人制に変わる可能性さえある。すでに、国体も7人制に変わっている。「五輪の有望競技」がラグビー界の枠を超えて人気になるかもしれない。
11人制だったハンドボールは7人制に変わった。バレーボールも9人制が6人制になった。トライアスロンは合計200キロを超える「鉄人レース」が主だったが、合計51・5キロのレースが五輪に採用されると「五輪ディスタンス」として定着した。五輪が絡めば、ルールも変わっていく。
「昔のラグビーは15人だった」と言われる日が来ないと、誰が断言できるだろうか。もちろん15人制には15人制の魅力があるし、歴史もある。それでも長い年月をかけて競技が姿を変えることもある。五輪にはその力があるし、7人制には魅力がある。
チーム最年少ながらエースとして活躍した合谷は五輪を「最高の舞台でした」と振り返った。「東京(五輪)を目指して、頑張りたい」と、メダルを逃した悔しげな表情の奥で目を輝かせた。これまで、ラグビーになかった「五輪」ができた。4位という彼らの奮闘を次につなげることは、ラグビー界の責務になる。【荻島弘一】