三宅星南が秘める「タイタニック」への思い 「未練があって…」

2022年4大陸選手権4位の三宅星南(22=関空スケート)は、9月に大阪・高石市内の臨海スポーツセンターで行われた近畿選手権で、過去のプログラム「タイタニック」を演じました。8月の木下トロフィー争奪大会から急きょ変更し、2022-23年シーズンのフリー曲を選択。結果はSP77.72点、フリー137.17点の合計214.89点で総合4位にとどまりましたが、2季前の思いを晴らす一歩となりました。観客前で披露し、改めて深めた今季プログラムへの思いをお届けします。

フィギュア

「『Don Quixote』をするつもりだったんですけど…」

数十メートル先で、太鼓の音が軽快に弾んでいる。その先に目線を向けると、黒のはっぴにはちまき姿の若者がずらり。花壇の脇に腰かけてだらんと足を伸ばす女子小学生の細い髪は丁寧に編み込まれ、小さい頭を守るように覆っている。2週間後のだんじり祭り本番を前に、試験曳きを行う彼らは、限られた日にしか着ることのできない晴れ着に身を包み、気持ちを高ぶらせていた。

近畿選手権男子フリー 演技する三宅星南(撮影・藤尾明華)

近畿選手権男子フリー 演技する三宅星南(撮影・藤尾明華)

その高揚感は、近畿選手権の会場である臨海スポーツセンターの中にも、緊張感となって続いていた。衣装や音へのこだわりも、山車を曳く彼らと同等か、それ以上の熱に感じる。

ジュニア女子の村上遥奈は、昨季から継続するショートプログラム(SP)で「フリフリを着てみたくて…」と衣装を新調。女子の白岩優奈もSPの衣装を「せっかく美しいドレスを着られる機会なので『ドレスを着たい』と衣装屋さんにお願いしました。お気に入りで、関大の選手にはめっちゃ見てもらってます!」と胸の刺しゅうを指さし、うれしそうにカメラマンに自慢していた。

三宅も例外ではない。特に、フリー「タイタニック」で着るサスペンダーの衣装には、思い出がたくさん詰まっている。

「今シーズンは『Don Quixote』をするつもりだったんですけど、シーズン入る前にもう1回考え直して。前のプログラムを滑ってもいいのかなと思ってきて…」

フリー演技後、三宅は開口一番、プログラムを変えた理由を切り出した。

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スポーツ

竹本穂乃加Honoka Takemoto

Osaka

大阪府泉大津市出身。2022年4月入社。
マスコミ就職を目指して大学で上京するも、卒業後、大阪に舞い戻る。同年5月からスポーツ、芸能などを取材。