辰吉寿以輝の現在地〈1〉何のために戦うのか…偉大な父を持つ26歳の再スタート

日本ボクシング界では近年、多くの快挙が成し遂げられてきた。4階級制覇、4団体統一王者、五輪金メダル、ミドル級制覇-。その中でいまだに達成されていないものがある。

親子2代での世界王者。

平成のカリスマボクサー、辰吉丈一郎を父に持ち、同じ道を歩む青年がいる。

辰吉寿以輝(26=大阪帝拳)。

その現在地を追っていく。

ボクシング

「一途(いちず)~辰吉寿以輝の現在地~」不定期連載スタート

7月19日、2年9カ月ぶりの試合に向け石田ジムでスパーリングに臨んだ辰吉寿以輝(左)

7月19日、2年9カ月ぶりの試合に向け石田ジムでスパーリングに臨んだ辰吉寿以輝(左)

2年9カ月のブランク経て8・6久々の試合

7月19日、大阪の北河内地方に位置する寝屋川市。京阪電鉄の香里園駅から歩いて1分、真新しいビルの3階に、寿以輝はいた。

白を基調として、米カリフォルニアをイメージした内装の石田ジム。プロ選手19人を抱えて、いま関西で勢いがあるジムだ。

午後6時半すぎ、上半身裸の寿以輝が、リングに立った。

バンタム級のA級ボクサー鶴海高士(6勝3KO6敗2分け)と6回のスパーリング。

寿以輝は、鶴海の左ジャブをじっくり見ながら足を使ってサークリングする。

左ジャブをダッキングでかわし、一気に距離を詰めて左右の連打につなげる。

2回には相手にロープを背負わせて、20発以上の連打をまとめた。

4回以降は、相手を見る時間が増えて、ジャブをもらう場面もあった。

3回までは寿以輝、4回以降は鶴海に分があった。

8月6日の試合に向けた出稽古だった。

どんな課題を持って、リングにあがったのか。

「足ですね。足。体で逃がして、パンチを外そうと思ってやった。前半はできたと思う」

唇を少しだけ腫らして、寿以輝はそう口にした。

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スポーツ

益田一弘Kazuhiro Masuda

Hiroshima

広島市生まれ。2000年の入社からバトル、相撲、サッカー、野球を担当して、13年からオリンピック担当。
14年ソチ、16年リオデジャネイロを取材して、18年平昌、21年東京は五輪班キャップを務める。東京五輪後に一般スポーツデスク。
大学時代はボクシング部で全日本選手権出場も初戦敗退。アマチュア戦績は21勝(17KO)8敗。