<高校サッカー:滝川二5-3久御山>◇決勝◇10日◇東京・国立
滝川二(兵庫)が久御山(京都)を破り、全国3778校の頂点に立った。16度目の出場で初の全国制覇。清水入りが内定した“岡崎2世”ことFW樋口寛規(3年)が2得点で今大会8ゴールとなり得点王に輝いた。2トップのFW浜口孝太(3年)との「ダブルブルドーザー」コンビで合計15得点。兵庫県に1938年度の神戸一中以来、69大会ぶり、首都圏開催となった76年度以降では初めての優勝をもたらした。
どこまでもゴールに貪欲(どんよく)だった。5分間のロスタイムが終わりを迎えようとする後半49分58秒。樋口は相手DFのクリアボールを奪うと、GKをかわし、試合を決める5点目のゴール。必死に追いすがる久御山の息の根を止めた。単独得点王を決める、この日2点目のゴールを奪い、スタンドに高々と両手を突き上げた。
樋口
歴史を塗り替えることができた。最高の結果で終われて、感謝の気持ちでいっぱいです。(得点王は)単独でとりたかったので、最後にとれてよかった。
プロ入りを希望しながら、大会前まで進路は未定だった。だが、青森山田との3回戦後、夏に練習参加していた清水から念願のオファーが届いた。「プロに入りたいと思っていたのでうれしかった」。あこがれのOB、日本代表FW岡崎慎司(24)の後を追い、清水とは明日12日に交渉し、契約を結ぶ予定だという。
チームとして1年間苦しみ続けた経験が、最後に実を結んだ。昨年7月には3歳年下の兵庫県中学選抜に引き分け、チームは空中分解。9月の選手権県予選前には、自分勝手なプレーを繰り返す選手たちに監督が怒り、1週間練習をボイコットしたこともあった。
だが、樋口はあきらめなかった。チームワークを取り戻そうと、主将浜口らと相談し、練習で野球やキックベースの真剣勝負を取り入れて団結力を高めた。大会中は、岡崎から届けられた「心を1つに」と書かれたメッセージボールをベンチに置き続けた。
樋口にとって、滝川二でのプレーは長年の夢だった。2日前には、中学時代の仲間たちからの激励の寄せ書きを受け取った。部活後、仲間を集め、近くの公園で夜間練習を繰り返す-。そんな原点を思い出し、この日のピッチに立った。
そして、数々の就活弾で進路を切り開いた。「Jリーグで結果を出して、最後は代表にも入って、世界で活躍できればいいと思う。岡崎さんは代表でも活躍されているし、僕も追いついて、追い越したい」。自らの力でこじあけたプロへの道。プロの舞台でもゴールを決め続け、さらなる高みを目指していく。【福岡吉央】