竹内らのメダルがスノボに競技の地位確立
スノーボード女子パラレル大回転で、竹内智香が銀メダルを獲得した。金メダルまであと1歩の銀メダルに「悔しい」と話したが、今大会日本女子初のメダルは快挙。スノーボードのアルペン種目で日本初のメダルに、日本中が沸いた。
自戒を込めて言えば「ノーマーク」だった。もちろん、担当記者は候補にあげていたし、実績があるのも知ってはいた。ただ、これまで多くの「候補」がメダルに届かないところを見てきた。正直「今回も難しいだろうな」と思っていた。「有力選手が出場しないW杯などの成績は当てにならない」というのが「常識」と勝手に思いこんでいた。
しかし、男子ハーフパイプ(HP)で平野歩夢が銀メダル、平岡卓が銅メダルを獲得。竹内も続いた。女子HPでは岡田良菜が5位に入り、男子スロープスタイルでは角野友基が8位入賞した。W杯(だけではないが)の勢いが、五輪につながった。聞けば「最近は有力選手もW杯に出るようになった」という。勉強不足を猛省するしかない。
スノーボードは、98年長野大会から採用された冬季五輪では新しい競技。もっとも、問題もあった。国際オリンピック委員会(IOC)がスムーズに五輪に加えるため「スキー競技の1種目」としたからだ。当時あった国際スノーボード連盟を飛び越えたものだったから、反発も大きかった。国内には全日本スキー連盟(SAJ)と日本スノーボード協会(JSBA)が両立。最終的には選手強化の協力などで歩み寄ったが、もともとは違う競技だ。かつては、両団体の板挟みに揺れる選手もいた。
竹内が「日本の強化ではダメ」とスイスへ飛び出したのも、こうした背景があったのかもしれない。しかし、スキー連盟にとってもスノーボードは五輪でのメダル有力種目。強化に本腰を入れないわけにはいかない。ジャンプや複合などの他種目と同じように強化指定し、遠征費なども補助している。それが、ようやく結果となって表れた。
今後、五輪のスノーボードはさらに発展しそうだ。テレビ受けがいいからか、種目数は増加傾向。長野では男女の大回転とHPだけだったが、02年から大回転がパラレル大回転となり、06年にスノーボードクロスを採用。今大会からはスロープスタイルとパラレル回転も加わった。男女10種目は全種目数98の1割、アルペンと並ぶ多さだ。
まだまだ可能性はある。かつて全日本選手権で行われていたモーグルや滑降、スキーのジャンプ台を使ってのビッグエアー(かなり無理はあるけれど)もIOCが採用しないとは限らない。肥大化が問題となる夏季大会と違って、まだ冬季大会には余裕がある。
かつては「遊び」と見る人もいたが、今大会で日本でも冬季「競技」としての地位を確立した。メダル有力な種目として、平昌(ピョンチャン)五輪からは注目度がアップするのは間違いない。W杯やXゲームのメディアの扱いも増す。日本オリンピック委員会(JOC)やSAJの後押しも強力になるだろう。竹内の「日本でもスノーボードをもっと知って欲しい」という思いは、銀メダル獲得によって確実に前進した。
日刊スポーツ新聞社
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