「最多のメダル数」大騒ぎには違和感
日本が8個のメダルを獲得-。テレビニュースもワイドショーも「偉業」として日本選手の活躍を紹介している。8個は98年長野大会の10個に次ぎ、92年アルベールビル大会の7個を上回る数。日本選手団の橋本聖子団長は「チームジャパンが一丸となった結果」と満足そうに話した。
ただ「国外の冬季五輪で最多のメダル数」と大騒ぎするのには、違和感を覚える。実施種目数が違いすぎるからだ。92年大会は57種目で7個、今大会は2倍近い98種目で8個。92年大会の実施種目でみれば、今大会のメダルは4個になる。もちろん、多くのメダルを獲得することは素晴らしいが、その数だけに一喜一憂するのは意味がない。
まず、メダルの中身が問題になる。男女フィギュアやスピードスケートの短距離などでメダルラッシュをもくろんだスケート陣は、フィギュア男子の羽生結弦が獲得した金メダル1個だけ。逆に、スキー(スノーボードを含む)が大量の7個を手にした。
スキーの躍進には、危機感があった。ジャンプなどの活躍で5個のメダルを獲得した長野大会後、低迷が続いた。06年トリノ、10年バンクーバーはメダルなし。72年札幌大会で日の丸飛行隊が表彰台を独占して以来、3大会連続でメダルを逃したことはなかった。
12年1月、全日本スキー連盟強化本部は、加盟団体に対して「強化指定選手選考基準の改定について」という通知を出している。冒頭の「趣旨」では、2大会連続メダルなしとスキー業界の衰退を関連づけて、ソチ五輪で「『絶対に』メダルを獲得しなければならない」と断言。獲得できなければ「スキー界全体に明日はない」と悲壮な覚悟もつづられている。
それまで種目別に決めていた強化指定を廃止、連盟が主体となって各種別共通の高いハードルを設け、メダル獲得の可能性の高い選手にだけ集中的に強化資金を投じた。A指定選手は遠征費の100%連盟負担、特A指定選手には別枠での強化費も用意された。
ノルディック複合の渡部暁斗やスキーハーフパイプの小野塚彩那は特A、スノーボードの平岡卓、竹内智香はA指定だった。「ソチでメダルをとるため」(古川年正競技本部長)の「選択と集中」は、成果を挙げた。ただ、少数の選手を集中的に強化する韓国や中国が得意としてきたやり方には、危うさもある。限られた資金では幅広い競技の普及や次世代の育成などが後回しにされる恐れがあるからだ。スキー連盟も覚悟の上なのだろうが、将来への不安は否定できない。
スノーボードでは若手の活躍も目立ったが、これも強化指定選手たち。決して層が厚いというわけではない。若手が育っていないスケート界は、もっと深刻だ。今大会の入賞者(4~8位)は20人。種目数は激増しているのに、その数は長野大会からほとんど変わらない。メダル予備軍は、相対的に減っているということだ。メダル8個という数字だけに浮かれていると、4年後には厳しい現実が待っているかもしれない。
日刊スポーツ新聞社
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