ワールドシリーズはドジャースが4年ぶり8度目の世界一となり、大谷翔平投手は悲願を達成。日本でもかつてない盛り上がりを見せました。そのワールドシリーズの歴史は古く、1903年に第1回が行われ、ピルグリムス(のちにレッドソックス)がパイレーツを5勝3敗で破って初優勝。この両リーグ優勝チーム同士の対戦があまりにも高い人気だったことから、05年以降、大リーグで恒例行事となりました。

最初の大会で対戦したピルグリムスの本拠地ボストンと、パイレーツの本拠地ピッツバーグは1000キロ程しか離れていません。しかし、昔から米国人は大げさな表現を好む風潮にあり、球団オーナーたちは、この全米一を決める戦いを「ワールドシリーズ」と呼んで譲りませんでした。

ワールドシリーズが日本で最初に放映されたのは77年。当時、NHKがヤンキース-ドジャースの第1戦をゴールデンタイムに放送。続いて、テレビ朝日が第4戦を現地から衛星中継。日本でも人気チーム同士の対戦とあって、大きな反響を呼びました。

これをきっかけに、日本で最初の大リーグブームが到来。翌年フジテレビが大リーグの独占放映権を獲得し、毎週月曜日のゴールデンタイムを中心に2試合放送。また、日本の街中に本場の格好いいファッションが流行し始めました。ただし、本場アメリカの強烈なパワー野球を堪能できても、当時は大リーグに日本人選手が1人もいなかった時代。79年11月には、日本でア・リーグとナ・リーグの一流選手を集めた「オールスターゲーム」が7試合行われました。ピートローズや同年本塁打王のキングマンらが来日しても、観客席はガラガラ。やがて人気が落ち目になり、単なるブームで終わってしまいました。

しかし、87年7月にNHK衛星放送が試験放送を開始。その目玉として大リーグ中継、やがてワールドシリーズも放映しました。95年ドジャースに入団した野茂英雄投手が活躍すると、日本中が大フィーバー。日本でようやく、本当の大リーグ人気が出て来ました。

やがて、02年にジャイアンツの新庄剛志外野手が、日本人選手として初めてワールドシリーズに出場。その後、05年にホワイトソックスの井口資仁二塁手が初の世界一となり、09年にはヤンキース松井秀喜外野手が初のMVPを獲得。夢の大舞台でも日本人選手が活躍する時代がやって来ました。

今年のワールドシリーズは、ドジャース-ヤンキースという43年ぶりの名門対決に加えて、メジャー7年目にして大谷が初の大舞台に立ちました。入団1年目の山本由伸投手も出場し、日本中が熱狂しました。日本で過去最多となる1試合平均1210万人の視聴者数をマーク。特に、山本が勝利投手となった10月26日の第2戦は、ポストシーズン全試合中で史上最多の1590万人。他に台湾、カナダ、メキシコ、ドミニカ共和国でも史上最多の視聴者数を記録。全世界で1試合平均3000万人を超えました。

こうして世界のスーパースター大谷の存在によって、今やワールドシリーズは米国だけでなく、名実ともに世界的規模へと成長。まさに「グローバルシリーズ」の時代到来と言えそうです。

【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)

ドジャース対ヤンキース ドジャース先発の山本(2024年10月26日撮影)
ドジャース対ヤンキース ドジャース先発の山本(2024年10月26日撮影)