テクニカルルーティン(TR)で3位だった日本(乾、三井、中村、箱山、吉田、中牧、丸茂、小俣)が95・4333点を出し、TRとの合計点を189・2056点とし、ロシア、中国に次ぐ銅メダルを獲得した。チームの五輪メダルは04年アテネの銀以来3大会ぶりで、08年北京以来2大会ぶりの銅を獲得したデュエットに続いた。
銅メダルが確定した電光掲示板を見た選手たちの顔がゆがむ。猛特訓の日々は無駄ではなかった。井村雅代ヘッドコーチ(66、HC)が普段なかなか見せてくれない笑顔を向けてくれた。デュエットに続く、銅メダル。日本シンクロが低迷期から復活した。
18日のTRでライバルのウクライナに0・3310点のリードを奪った。3月の五輪最終予選。チームの出場権は得たものの、ウクライナに0・0525差で敗れ2位。以来、曲こそ変えていないものの、振り付け、動き方などを一から作り直した。練習場のボードには「0・0525点差」の文字。悔しさをメダルへの原動力に変え、確実な演技でTR4位のウクライナの上を行った。
「選手たちの着ぐるみを脱がせてほしい」。14年4月、日本代表に10年ぶりに復帰した井村HCは、中国代表時代からコンビを組む浅岡良信トレーナー(41)に指令を出した。欧州はもちろん、中国に比べて、日本の足は圧倒的に短い。長い足に勝つためにはどうするか。「鉛筆の芯」のように鍛えあげ、切れがあり小技のきく足に変革することだった。
週3回3時間、多いときは5時間の陸トレを敢行。腹筋は1日2500回がノルマの肉体改造を続けた。過酷な陸トレの後に水中に入る。1日12時間以上の練習は当たり前。休みも自主練習。14年4月にはチーム代表の吉田が「もう辞めます」と井村HCにたんかを切るように言った。何とか続行も、昨年3月には2人が離脱した。
日本代表が空中分解の危機になっても、井村HCは決して妥協しない。
井村HC
無理をしたら、もっと無理ができる。普通を上げる。10回が普通なら200回はきつい。200回が普通になったらいつも通り。自分の当たり前、普通を上げる。
耐え続けた選手たちは昨年世界選手権で、4大会8年ぶりにメダルを獲得。結果が出たことで、選手たちはより厳しい練習も耐えられるようになる。チーム平均の体脂肪率は23%から18%。特にお尻の筋肉も鍛え上げることで、お尻のたれた日本人体形から脱却。お尻を足の一部にすることで足は長くなる。外国勢ともひけをとらないような足になった。
泣きながら練習するのは当たり前だったが、井村HCからは「泣いていいのは親が死んだときと、メダルを取ったとき。悲劇のヒロインになるな」と怒鳴られた。チームでは12年ぶりのメダル。この日ばかりは選手たちは井村HCと抱き合いながら、心行くまで涙を流した。強引な指導に賛否があるのは事実。権利意識の高まる現代ではパワハラと紙一重の部分もあるが、井村式のスパルタ指導が、日本シンクロを復活に導いたことは間違いない。【田口潤】