夏の終わりが近づくと共に、飛び込み競技の慌ただしいシーズンにも終わりがきた。
今年最後の全国大会となったのは国民スポーツ大会(国スポ)。9月14日~16日にかけて、熱い戦いが繰り広げられた。舞台は佐賀県、SAGAサンライズパーク。今年のパリ五輪代表選手全員が出場し、会場は大盛り上がりとなった。
私も国スポチャンネルの解説者として本大会に参加。解説をしながらも面白い試合展開に興奮を隠せなかった。
特にレベルの高い試合を見せてくれたのは、成年男子高飛び込み。日本選手権はもちろんのこと、国際大会にも出場する選手たちが勢揃い。どんな戦いを見せてくれるのかと期待が高まった。しかし、多くの選手が2本目までは不安定な演技が目立った。この時点では先が見えず、順位が大きく入れ替わる展開に。それでも3本目からは安定した演技が増え、試合の流れが少しずつ見えてきた。
熾烈なメダル争いが始まった。まずは、全選手の中で最も高難度の技を揃えている大久保柊(茨城県)。高さ、スピード、入水と、安定感抜群の演技を次々に披露しトップをキープ。そこに昨年の王者である西田玲雄(大阪府)も調子を上げ、10点が出るほどの完成度の高い演技を連発した。更に、金戸快(東京都)も落ち着いた演技で8点以上をコンスタントに出し、粘り強く食いついていった。最終的にはこの3人でメダルの色をかけた戦いになった。
ラスト1本を残して、1位と3位の点差はわずか4・95点。失敗した者が負けという試合展開に、会場の声援にも力が入った。
まず登場したのは西田。6245D(逆立ち後ろ宙返り2回2回半捻り・自由型)難易度3・6の大技で逆転を狙った。西田の得意技でもあるこの演技。周囲の期待も高まる中、ほぼ完ぺきに決め84・60点を獲得。残る選手にプレッシャーをかけた。
そこに307C(前逆宙返り3回半・抱え型)難易度3・4で臨んだ大久保。これも彼にとって得意な1本。決まれば優勝が見えてくる。会場中の熱気が高まる中、大きく空中に飛び出した。完ぺきに決めた。全ジャッジから9点以上を獲得し、西田を上回る91・80点でトップを守り抜いた。
そして大トリで登場した金戸は、207C(後ろ宙返り3回半抱え型)難易度3・3で最後の大逆転を狙った。踏み切りから空中までは高得点を期待させる美しさ。ただ、抱え型から体を伸ばすのが少しだけ早かった。大きく水飛沫が上がり、点数を伸ばせずに試合を終えた。
この時点で大久保の優勝が決まり、2位に西田、3位が金戸という結果となった。最後まで高いレベルでの激戦を繰り広げ、会場はもちろん、実況・解説や視聴者にもとてもエキサイティングな試合をみせてくれた。
パリ五輪で銀メダリストとなった玉井陸斗(兵庫県)はまだ高校生。そのため今大会では少年の部に出場している。日本の絶対王者が不在ではあったものの、世界にも通用するような演技が連発し、本当に見応えのある素晴らしい戦いだった。全体的にも入水技術の高い選手が多く、飛込競技の見どころでもある「ノースプラッシュ」が多く見られた。「この戦いを世界の舞台でもしてほしい!」そう願うほど日本のレベルは上がってきている事を改めて感じた。
昨年までは「国体」という愛称だった「国スポ」。今年から名前が変わり、なかなか馴染めず何度も「国体」と言ってしまう私だが、来年は滋賀県での開催が決まっている。
長いようであっという間のシーズン。選手たちは、よく頑張った自分を労り、少し休息を入れた後には、次の目標に向けてまたトレーニングに励んで欲しいと思う。
最後になるが、今シーズンも試合を支えてくれた、競技役員やスタッフ、そしてジャッジやコーチの皆さん、本当にお疲れさまでした。そして、ありがとうございました。
また来年もよろしくお願いします。(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)
(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「中川真依のenjoy!ダイビング」)