9月22~23日、東京都江東区海の森水上競技場で、アジアトライアスロンカップ ならびに 2024JTUトライアスロンエイジグループ・ナショナルチャンピオンシップシリーズ(スタンダード・スプリント)が開催された。
1日目はエイジレースが実施された。強風が予報されるなか、主催者側はできるだけトライアスロン(3種目)という形をとるために協議を重ねたが、最終的にはランのみでの競技開催という判断。結果として、競技中も含めて予報通りに風速20メートル近くの暴風が吹くという環境下だったので、主催者の判断は大正解と言える。主催者側の迅速な判断には選手目線としても感謝すべきと思う。また同大会は、東京都支援事業の一環でもあり、子どもたちへの体験機会の創出という目的でセレモニーサポート等のキッズプログラムも展開されており、トップアスリートと触れ合うことでの子どもたちの笑顔も印象的だった。
この大会にて、日本財団主幹【HEROs pledge】の活動の一環として、『他競技の賛同アスリートと共にトライアスロンを通して、自然を感じながら環境問題についてアプローチをする』という目的のもとで、スプリントディスタンスのリレーの部にゲストアスリートとして参加した。
メンバーは、スイム担当予定だった飛び込み競技オリンピアンの中川真依さん、バイク担当予定だった現役トライアスロン選手の古谷純平選手(三井住友海上所属)、ランの担当はマラソン界のレジェンド、谷川真理さんにお願いした。残念ながらランのみとなったが、参加者の方々に『HEROs pledge』『環境問題』というフレーズはインプットされたかと思う。
谷川さんは日頃から環境について取り組みをされていて、『これを機に気候変動や地球温暖化に興味を持っていただき、みんなでアクションしていけたら良いですね。そして、トライアスリートの方はポジティブの方々が多いような気がしました。暴風でランのみになり、みなさん、悔しいだろうにそんな素ぶりも感じませんでした。マラソンと違って3種目もあるので、気象コンディションも影響されやすいだろうなあと思いました。』と話してくださった。
古谷選手はトライアスロン選手としてトライアスロンが環境変化に直に関わると実感しており、『トライアスロン選手として、自然環境に対して自分自身も向き合い、アクションしていこうと思います』と話し、トライアスロン界をけん引する1人として次世代にもアプローチしていく予定だ。
そして中川さんは、石川県出身で郷土愛あふれる方だ。『異常気象を食い止めたい。小さなことかもしれませんが、私たちの行動が未来につながっていくと願いながら、行動していきます。そして、初めてトライアスロンに参加し、試合会場の環境の違いや、今回のように強風による競技内容の変更等にも柔軟に対応する力が大切だと感じました。そこにさらに、順位争いのプレッシャーも重なると思うと、世界で戦うには相当なポテンシャルが必要だと感じました。この競技を続けていくためには環境を守らなければ競技事態がどんどん過酷な状況になってしまうのだと今回身をもって実感しました』と話してくださった。
『スポーツ界から使い捨てプラごみをゼロに』というスローガンものと活動しているが、一人一人の意識、理解が大切となると思った。
2日目は、エリートカテゴリーの大会にて、現役アスリートに対しての啓発活動を目的としたエコステーションを実施した。
レースで疲れている中、多くのアスリートが足を運んでくれた。
東京都トライアスロン連合理事の西麻依子さん、東京五輪トライアスロン代表の岸本新菜選手、早稲田大学大学院で環境問題の研究をしている藤倉萌映さんにご協力いただき、実施できた。
本大会で大活躍だった流通経大学の定塚利心選手、大島拓人選手らは、『環境問題について正直考えたことがなったが、これを機に興味が湧いた。自分たちができることは何かと考えていきたい。』と気付きを感じてくれたのはうれしかった。
東京ヴェルディトライアスロンチームの外山高広選手は40代のベテラン選手。『若い次世代の選手より、我々世代の方が気候変動を感じているはず。伝えていかなければ』と話してくれた。
しかし一方で、『このような小さなことをしても環境なんて変わらない。大きなことをしないと意味がない』という意見もあった。悲しい気持ちにもなったが、この選手の率直な意見だと思うので受け止めて次回のアクションにつないでいきたい。
他競技の谷川さん、中川さんとともにアクションできたことでトライアスロンの魅力、タフさを改めて実感し、さらには自然環境に密接する競技上、環境問題に対しての啓発活動の強化はする必要があると思った。
最後に。今回で約3年半に渡り掲載させていただいたコラムは最終回となります。『ひそかに楽しみにしているよ』という声もあり、大変うれしく、私自身も勉強になりました。
トライアスロンという競技を通して学び得たものや魅力、スポーツの力をこれからも発信し、誰かの心に少しでも残る活動をしていきたいと思います。ありがとうございました。
(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン日本代表)