【還暦野球】湘南ドリームズの群像から元気をもらおう 素晴らしきかな人生/連載1

野球人口と未来を考えるとき、まずはピラミッドの土台をなす少年野球が思い浮かびます。同じように、シニア層にも「還暦野球」という広大なすそ野が広がっていることをご存じですか。神奈川・藤沢を拠点に活動する「湘南ドリームズ」の群像をルポすると、セカンドキャリアの友に収まらない野球の奥深さが透けてきます。市井から学ぶ6回連載の第1話。

その他野球

◆湘南ドリームズ1998年(平10)設立。「ドリームズ」は、同年に「かながわ・ゆめ国体」の愛称で行われた神奈川国体にちなんだ。07年全国大会8強。還暦、古希、グランド古希の各カテゴリーに37選手が所属している。石橋正行代表。練習見学、体験は大歓迎。詳細はHP(https://shonandreams.1web.jp/)まで。

■「今、年配の方の野球人口が増えているようなんです」

「湘南ドリームズ」の取材に向かう湘南台行きの相鉄線は、新横浜を過ぎるといよいよ人の往来がなくなった。

朝日がグレーの床に跳ね返り、がらんとした車内を照らしていた。熱を帯びたノースフェイスの黒いダウンジャケットが「もう着納め」と訴えてきた。

4月の空気を目いっぱい浴びると、初対面の緊張など小さなことに思えてきた。ジッパーを下げて微睡みから戻った。

「還暦野球って知ってる?」

23年の晩秋、会社の先輩に聞かれた。

マーケティング調査の一環で「なぜ野球が好きなんですか」と聞き回っていると、多摩川の河川敷近くに構える理髪店の店主に言われたという。

「今、年配の方の野球人口が増えているようなんです。部活みたいにやっているようですよ」

60代の還暦、70代は古希。75歳以上がグランド古希で、80代は傘寿。年齢で小刻みにカテゴリーを分け、入れ替え戦ありのリーグ戦を行っている。

球場などサイズは小学生の高学年と同じ。全国に連盟があり、元プロや社会人野球の猛者もいて、野球どころの神奈川には1000人規模の登録がある…神奈川県還暦軟式野球連盟と連絡を取り、師走の理事会にお邪魔した。

年が明けて2カ月ほどすると「湘南ドリームズを取材してください」とのメールが届いた。何度かやり取りを交わし「4月14日の10時から、藤沢市の葛原グラウンドで練習しています」との約束を取り付けた。

知らなかったから、ではない。「還暦野球」という四文字に直感が刺激され、取材したい情動が走った。

終点までの30分、情動の理由を考えていた。

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1999年入社。整理部―2004年の秋から野球部。担当歴は横浜(現DeNA)―巨人―楽天―巨人。
遊軍、デスクを経て、現在はデジタル戦略室勤務。
好きな取材対象は投手、職人、年の離れた人生の先輩。好きな題材は野球を通した人間関係、カテゴリーはコラム。
趣味は朝サウナ、子どもと遊ぶこと、PUNPEEを聴くこと。