元専属キャディーは見た 全米プロで号泣した松山英樹が、朝6時のホテルで…/連載1

2021年にマスターズ優勝、24年8月のパリ五輪では銅メダル獲得と世界で活躍する男子プロゴルフの松山英樹選手(32)。元専属キャディーを務めた進藤大典さん(44)が、知られざる世界トップの強さの秘密を明かしてくれました。2013年から6年間コンビを組んで、国内、海外で通算12勝を挙げた元“相棒"が見てきた超一流のマネジメント。個人競技でありながら、選手を支えるチームビルディングスの重要性とは―。ピンチや壁に直面した際、並外れた胆力はどのように養われたのか―。ビジネスにも通じるヒントがあると思います。

3回に分けて連載します。

ゴルフ

本人提供

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◆進藤大典(しんどう・だいすけ)1980年(昭55)7月3日、京都府生まれ。明徳義塾―東北福祉大卒。松山英樹選手が2017年、世界ランキング2位となった際の専属キャディー。2002年からキャディーをはじめ、2003年には宮里優作選手の専属キャディー。2006年には谷原秀人選手のバックを担ぎ、JCBクラシックでプロキャディーとして初優勝を飾った。男子プロでは片山晋呉、岩田寛選手ら、女子プロでは上田桃子選手らのキャディーを務めた。現在は主にスポーツマネジメント業「ミュアフィールドヴィレッジ株式会社」の代表取締役を務め、ゴルフ解説、講演、YouTube配信ほか、今年11月には「第4回進藤大典ジュニアトーナメント2024」を開催するなど、子どもたちの育成に力を入れている。趣味は映画観賞、旅行。173センチ、70キロ。家族は夫人、2男。アイダ設計所属。

■「実はヒデキと大げんかしたことがあって」

どんなに強い人でも、人に支えられて今がある。

常に松山選手のそばにいて支えた進藤さんは、「勝つためにはヒデキの実力が100。そしてチーム・マツヤマのメンバーのコーチが25、トレーナーが25、マネジャー、通訳、家族が25、キャディーが25の200の力が必要。さらにメーカーの用具担当の方など周囲の力が加わらないと、世界のメジャーで勝てなかったと思います。マスターズはチーム力の勝利ともいえますね。まさにビジネス界でいう、チームビルディングが大事だと思います」。

世界のトップを陰で支えるチームメンバーは、厚い信頼関係で結ばれている。進藤さんが「実はヒデキと大げんかしたことがあって。3日間、口をきかないし、お互いが意地を張って、もうキャディーをやめる覚悟でいました」と振り返ったエピソードがある。

2015年、「WGC-HSBCチャンピオンズ」(世界ゴルフ選手権)の初日。11番ホールで進藤さんが風を読み違え、ティーショットがグリーンオーバーした。

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編集委員

平井勉Tsutomu Hirai

Kumamoto

1967年、熊本市生まれ。1990年に入社し、プロ野球の西武、ヤクルト、巨人などを担当。米ロサンゼルス支局時代には大リーグを担当し、野茂英雄、イチローらを取材した。
野球デスク、野球部長、経営企画本部長などをへて現職。著書「清原和博 夢をつらぬく情熱のバッター」(旺文社)「メジャーを揺るがす大魔神 佐々木主浩」(旺文社)がある。