大貴の強がりにすごみ感じた
すごみを感じた。ジャンプ男子団体ラージヒルで銅メダルを獲得したメンバー伊東大貴(雪印メグミルク)のことだ。五輪直前のW杯ビリンゲン大会(ドイツ)で痛めていた右膝とは逆の左膝裏を痛めた。そのことは伝えていたが、ソチ入り後「普段は痛みはない」と言った。練習中も飛び終えると足を引きずるようなしぐさを見せたが、「痛くない」と言い張った。精いっぱいの強がりだった。
日本ジャンプ陣にとって葛西や岡部らのベテラン勢の存在は大きい。その一方で低迷期には若手がたたかれた。「若手としてどう思う?」。批判の矢面に立たされたのはいつもエースの伊東だった。「おじさんたちに負けないように頑張ります」。ジョークでかわしたが、悔しさは表情を見ればすぐに分かった。
足の状態を考慮し、個人戦はノーマルヒルを欠場し、ラージヒルは9位。あとがない団体戦。足は限界だったが、だれか1人でも欠けては戦えない。最後は意地だけだ。2回目に表彰台を確信させる132メートルの大ジャンプ。ランディングバーンを滑り降りると自分を支えきれず左に倒れ込んだ。
セレモニーでは葛西に肩を抱かれ歩いた。「痛かったけど痛いって言ったら自分に負けてしまう。やりきった最高の五輪だった」。初めて人前で泣いた。初のメダルを手にし、伊東が男になった。【松末守司】
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