ボクシングの「地元判定」連想させた採点
その瞬間、取材エリアは2つに分かれた。優勝したソトニコワのフリー。後半、3連続ジャンプの2回転ループで着氷が乱れた。SPは1点差以内に3人がひしめき滑走順はコストナー、ソトニコワ、金。「ミスをすれば金メダルはない」が大方の予想で、ソトニコワの優勝はないと思った。
だから149・95点の表示に思わず「えっ」と声が出た。周囲を見回すと、口が開いたままの者、わずかに首を振る者、まゆ毛を上下させる者。着氷が乱れた2回転ループの「2Lo」というモニターの文字を指さす者もいた。喜ぶ地元メディア以外は、冷めた反応が多かったと思う。韓国人記者は「terrible(テリブル=ひどい)」とつぶやいた。この時点で、金妍児はノーチャンスだったかもしれない。
問題の2回転ループは出来栄え点でマイナス0・9点がついている。驚異的なスコアは、普段よりも約5点近く伸びた演技構成点が主な理由だ。地元の声援が後押しといえば聞こえはいいが、連想したのはボクシングの地元判定。ただボクシングにはKO決着があるが、フィギュアにはない。
別にフィギュア取材歴が何十年というわけじゃない。「採点競技だから」という声もわかる。ソトニコワは必死で演技をしただけだ。ただ全6種類の3回転ジャンプに挑んだ浅田や、右膝痛のまま4回転ジャンプに24回連続で失敗した高橋の姿を考えると、何だか切なくなった。【益田一弘】
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