[ 2014年2月24日11時17分
紙面から ]W杯に向けて新千歳空港を出発する葛西(撮影・保坂果那)
さすがレジェンド、遅刻も大丈夫。ソチ五輪ジャンプ男子ラージヒル銀メダルと団体銅メダルを獲得した葛西紀明(41=土屋ホーム)が23日、W杯遠征のため、新千歳空港を出発した。つかの間の日本滞在中、多忙を極めて疲れがたまり、寝坊で1時間近く遅刻して搭乗便に乗り遅れたが、慌てるそぶりはまったくなし。日本人男子初の総合優勝に向けて、新たな伝説づくりへと旅立った。
レジェンドがさっそうと空港に姿を現した。午前7時30分の出発便から1時間近く遅刻しているはずなのに…。携帯電話を手に足取りはいたって普通。眼鏡とマスクの変装をしていてもソチ五輪メダリストから漂うオーラなのか、葛西とモロバレだ。「5時と5時15分、5時半に目覚ましをセットしていたのですが全部スルーしてしまいました。普段はちょっとの音でも気づくんですが、今日は全く起きなかったですね」と照れ笑いを浮かべた。
都内で所用があって出国前日のこの日の早朝便を予約したため、事なきを得たが、あせりはまったくなし。それどころか、一躍時の人となり、自らの置かれた状況を楽しむ余裕さえあった。
空港ではすぐに約50人に取り囲まれ、写真を撮られるなど騒然となった。帰国後は外出時に変装が欠かせなくなったが「思ってた以上に反響があって、芸能人みたい。まんざらでもない」とニンマリ。サービス精神は相変わらずで、2つのメダルはポケットに忍ばせていた。
寝坊するのも無理はないくらい、疲れもたまっている。20日夜に北海道に戻った後は、翌日からの2日間で所属先の報告会や関係者へのあいさつまわりなど過密スケジュールをこなした。それでも前日22日夜はうれしい再会もあった。姉紀子さんら家族が会いに来てくれた。「メダルを見せることができて、喜んでくれて本当に良かったです」。メダルを一番見せたかった人に披露し、充実感が漂っていた。
ソチ五輪では、冬季五輪日本人最年長メダリストとなり伝説をつくった。次ののシナリオは日本人男子初のW杯個人総合Vだ。自身は過去2度の3位が最高。現在3位でソチ五輪2冠の首位ストッホ(ポーランド)とは175点差の逆転圏につける。
今日24日、成田から25日に個人第21戦が行われるスウェーデンに向かう。「オリンピックの金メダルと同じくらい難しいと言われているW杯総合優勝を目指して頑張っていきたい。届かないポイント差じゃない」と力を込めた。新伝説を引っ提げて再び日本に帰って来る。【保坂果那】
◆ジャンプ男子W杯の総合成績
92-93年シーズンに葛西が3位となり、日本人で初めてトップ3に入った。96-97年に船木和喜(38=フィット)が同じく3位、97-98年に日本人過去最高の2位となった。98-99年に再び葛西が3位となって以降は、00-01年の葛西と11-12年の伊東大貴(28=雪印メグミルク)の4位が最高。