日本学生選手権終了

私が指導して初めての日本学生選手権(8月28~31日)が終了した。

男子の成績は7位でシード獲得。去年よりも3つ順位を上げた好成績だった。今日はその中でも100メートル平泳ぎで3位を獲得した本田航平選手(3年)の話をしたい。

彼は最後の15メートルで必要以上に力んでしまう癖があり、私が指導をし始めてから、何度もレースで挑戦をしたが、できないことが多かった。しかし6月ごろから徐々に練習で注意されていたことが、メイン練習や試合の大事な場面でできるようになっていた。

予選が終わり、彼の泳ぎを分析グループに確認したところ、ラスト25メートルのテンポは上がっているのに、泳速は著しく落ちていた。

本田選手は私に『最後、泳ぎが詰まってしまいました。』と言ってきたので、まず私は決勝メンバーの後半のタイムを全員分確認した。

すると、後半のタイムは本田選手が8人の中で最も速いのがわかった。

私は決勝の準備をする本田選手に「後半には自信を持っていいから、前半抑えて後半の15メートルだけテンポを変えてみて」と指示をした。

本人も納得したようにうなずいたので本人がレース中に冷静に泳げれば大丈夫だと確信した。

私も現役時代、よく平井先生に「最後にバテるのが出し切っているわけではない。最後まで力を配分することが大事」と言われていたことを思い出した。

見事に本田選手は指示通り泳ぎ、ベストタイムの1分00秒49で3位。最後15メートルで逆転することができた。

これは選手の能力に脱帽した。記録や順位を狙う中、冷静に戦術プラン通りに体を動かすことは簡単なことじゃない。それをインカレの舞台で実行した本田選手はこれからの自分の自信にしてほしい。そして、選手に安心して実行できる戦略プランを提案できるよう、私も選手から学んでいきたいと思う。

一方、女子は創立以来初の9位でシード落ちをした。

かつて女子は総合優勝を何度も経験したことのある強豪校だったことから、シードを取れないことなど疑いもしない中でのシード落ちだった。

しかも、8位新潟医福大と147.5点で並んだ中で、リレー種目の合計得点で勝敗が決まった負け方だった。これには何かの意味がある、と私自身深く考えた。

自分を律することができていたか、選手に心残りなことをさせていなかったか。常に自身に自問自答しながら次の学生を指導したいと改めて感じた。

まだまだ始まったばかりの私の指導生活。この結果は一生忘れないだろう。

(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「清水咲子のなんでもさっこ節」)

◆清水咲子(しみず・さきこ)1992年(平4)4月20日、栃木県生まれ。作新学院高-日体大-ミキハウス。本職は400メートル個人メドレー。14年日本選手権初優勝。16年リオデジャネイロ五輪は準決勝で日本新の4分34秒66をマーク。決勝に進出して8位入賞。17年世界選手権は5位に入った。21年4月の日本選手権をもって現役引退した。今後はトップ選手を育てる指導者を目指し、4月からは日体大大学院に進学。同時に水泳部競泳ブロック監督も務める。