なぜまだ戦うのか。柔道高藤直寿/取材ノート12

2024年のスポーツ界を、日刊スポーツの記者が取材をもとに振り返る連載「取材ノートから2024」最終回。柔道男子60キロ級で東京五輪金メダリストの高藤直寿(31=パーク24)はパリ五輪出場を逃し、一時は引退を考えていました。ただ、現役続行を最終的に決断させたのもパリの地でした。なぜまだ戦うのか。11月の復帰戦前に大けがを負いながらも揺るがない心境に迫りました。

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取材ノートから目次

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10月31日、高藤は復帰戦へ向けた稽古で打ち込み

10月31日、高藤は復帰戦へ向けた稽古で打ち込み

事態の暗転から15分後。「試合がしたいんだよ!」

その叫びはノートに書き込まなくても忘れない。だから、一切メモをしなかった。「試合がしたいんだよ!」。10月31日、神奈川県内の東海大の道場で、高藤は叫んでいた。己を鼓舞するように。

その15分前、事態は暗転していた。約1年ぶりの復帰戦だった講道館杯の試合を2日後に控えた稽古で「痛!!」と絶叫。左膝を抱え、畳に沈んだ。「やったわ…」。重症は理解した。即座に、出場の道を探り、医療機関を探し始めた。診察を受けるため道場を去る際に、冒頭の叫びを聞いた。

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スポーツ

阿部健吾Kengo Abe

2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて15年目。異動ゼロは社内でも珍種です。
どっこい、多様な競技を取材してきた強みを生かし、選手のすごみを横断的に、“特種”な記事を書きたいと奮闘してます。
ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。