<第90回箱根駅伝>◇3日◇復路◇箱根-東京(5区間109・9キロ)
またも目前で3冠の夢が散った。今季の出雲、全日本を制した駒大は往路2位から逆転を狙ったが、優勝した東洋大に差を広げられる10時間57分25秒の総合2位に終わった。90年度大東大、00年度順大、10年度早大に続く史上4校目の大学駅伝3冠はならず、98年度と同じく箱根駅伝2位での2冠どまり。期待された主将の窪田忍(4年)は9区に登場したが追い上げられず、再び歴史は繰り返された。
差が縮まらない。復路のエース区間9区。どんどん残り距離は少なくなるが、窪田の耳に聞こえる現実の厳しさは増した。スタート時の東洋大との3分40秒差が、7キロ付近の権太坂で3分32秒、15キロ付近の横浜駅で3分17秒、20キロ付近の生麦駅で3分13秒。「窪田ならもしかしたら…」。そんな淡い期待が霧散していく。「体が動かない。まずい」。本人もそう感じていた。最初の1キロの入りから異変を感じ、もがいた。
もう、窪田しかいなかった。往路での東洋大との差は59秒。大八木監督は「想定内。ギリギリのところ」と逆転での3冠を視界にしていたが、同時に不安もあった。「気象条件が良く、目標タイムより上で走る選手が多くなる」。そうなれば前を走る東洋大が優位。全日本は6人、出雲は8人、箱根は10人で1人当たりの距離も延び「選手層の薄さ」も気掛かりだった。
6区西沢(3年)がスタートの1歩目でずっこける不安な幕開けを切ると、悪い予感は的中。7、8区には1年生を起用せざるを得ず、軽快に逃げる東洋大との差は開く一方。1年から主力で区間賞を連発してきた窪田の切り札しかなかったが、9区を終えても3分12秒差で勝負はあった。同監督は「後手に回り気持ちが乗っていなかった。試合にも出過ぎたかも」とエースをおもんぱかった。
そもそも、今季は「育成の年」と見定めてきた。2冠に周囲の期待は高かったが、不安もあった。類いまれなキャプテンシーで引っ張る窪田に頼り、「自分に甘えないやつと、甘えるやつが極端すぎた」と同監督。復路で1年生2人の起用を強いられ、「上級生が走らないといけないが、信頼度がなかった。来年は中堅から下の練習の取り組み方を変えないと」とした。
98年度と同じく、またも箱根2位で3冠には届かなかった。主将も含めた人選は今日4日に決めるが、指揮官は「中村と村山でやっていくしかない」と2頭体制を敷く。これで6年も優勝から離れた名門。甘くない現実に、どこまで甘さを捨て、これからの1年間を過ごせるか。【阿部健吾】
◆窪田忍(くぼた・しのぶ)1991年(平3)12月12日、福井県鯖江市生まれ。鯖江高から陸上を始め、00年駒大に入学。5000メートルは13分45秒50、1万メートルは28分07秒01が自己ベスト。今大会前まで11回の3大駅伝に出場して区間3位以内が10回、区間賞5回の安定感を誇った。卒業後はトヨタ自動車に進む。マラソンで五輪出場し、メダルを取るのが夢。好きな歌手はmiwa。167センチ、53キロ。血液型O。